2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17016086
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Research Institution | National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East |
Principal Investigator |
落谷 孝広 国立がんセンター(研究所及び東病院臨床開発センター), がん転移研究室, 室長 (60192530)
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Keywords | アテロコラーゲン / ドラッグデリバリー / 遺伝子治療 / RNA干渉 / siRNA / リンパ節転移 |
Research Abstract |
有効かつ安全ながんの遺伝子治療法の実現に向けて、アテロコラーゲン・デリバリーシステムによる生体内遺伝子発現制御法を開発した。この方法はバイオマテリアルの一種であるアテロコラーゲンをキャリアとして種々の治療用が依頼遺伝子ベクターや核酸医薬を生体内で徐放し、ヌクレアーゼによる生体内分解から核酸を保護することで、遺伝子ベクターの欠点であった生体内での非制御性を改善し,ベクターの能力を最大限に発揮させうる画期的な方法である。本研究では,アテロコラーゲン包埋法の応用として、遺伝子機能を特異的且つ高い効率で制御可能なsiRNAのがん治療への応用の道を開くことに力点を置く。アテロコラーゲンによる核酸医薬のデリバリー技術は、全身性に適応可能であることから、前立腺がんや乳がんにおける全身性の骨転移に対するsiRNAの治療法の開発を試みてきた。本年度はヒト乳がんのリンパ節転移に関与する遺伝子を同定し,その発現をsiRNAによって抑制し、転移を抑制する実験系の開発を試みた。まず、ひと乳がん細胞株MDA-MB-231細胞に関して,これまでの報告からリンパ節転移に係ることがin vitroの系で示唆されている17の候補に注目し,それぞれのsiRNAを用いて、マトリゲルによる細胞浸潤のアッセイ系を用いて、浸潤を効果的に抑制するsiRNAを検討した。その結果,CXCR4,MMP-1,MMP-2,SLUGの4種の遺伝子に対するsiRNAがヒト乳がん細胞の浸潤能を顕著に抑制した。これらのリンパ節転移抑制候補siRNAsの効果を実証研究する方策として、動物モデルの構築を開始した。用いたMDA-MB-231細胞にルシフェラーゼ遺伝子を組込み、バイオフォトイメージングにより動物でのリンパ節転移をリアルタイムにイメージングすることに成功した。この細胞はfat padに移植され、50-60日後に腋下リンパ節への転移が確認された。移植部位での遺伝子発現を抑制することが可能かどうかは、がん細胞が発現するルシフェラーゼに対するsiRNAをアテロコラーゲン法により局所投与し,ルシフェラーゼの発現の抑制をフォトン数でカウントすることにより検証した。その結果,24時間後にルシフェラーゼの発現は90%以上抑制された。今後,in vitroで乳がんの浸潤を抑制することのわかった標的遺伝子に対するsiRNAの効果を動物の系で評価することで、リンパ節転移に関係する標的遺伝子の特定を行う。
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