2009 Fiscal Year Annual Research Report
視標追跡運動における視標の予測値と頭部・眼球運動システムの統合と分解の脳内機構
Project/Area Number |
17022001
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
福島 菊郎 Hokkaido University, 大学院・医学研究科, 教授 (70091486)
|
Keywords | 視標追跡眼球運動 / 記憶依存性追跡眼球運動課題 / 小脳片葉領域 / 背側虫部VI-VII葉 / 室頂核 / Purkinje細胞 / 作業記憶 / no-go |
Research Abstract |
視標追跡眼球運動の企画と制御に関わる脳内機構をsmooth pursuit発現主要経路と対応させて理解することを目指して,ニホンサルに記憶依存性追跡眼球運動課題を訓練し,小脳片葉領域,背側虫部VI-VII葉,室頂核後部領域の課題関連ニューロンの応答特性を比較した.この課題ではcue 1で提示した視覚対象の運動方向を記憶させ,cue 2の指示により運動の準備(go)あるいは運動しない(no-go)を要求した.片葉領域と背側虫部からそれぞれ65個と74個のPurkinje(P)細胞の単純スパイク発射を解析した.片葉領域では90%はaction期間のみ追跡眼球運動の方向特異的に応答した.これに対し背側虫部の課題関連P細胞の過半数(67%)はno-go試行でcue 2から持続的に発火が増加した.Cue 2からの応答潜時は,SEFよりも遅かった.少数(10%)がaction期間のみ追跡眼球運動の方向特異的に応答した.室頂核の課題関連ニューロンの過半数(61%)は,no-go試行でcue 2から持続的に発火が増加した.35%はaction期間に,追跡眼球運動の方向に特異的に応答した.この中にはvisual motionの作業記憶期間中に応答したニューロンも記録された.片側室頂核後部領域へのmuscimol注入により,よく知られた運動障害(saccadic dysmetria)と対側へのpursuitの潜時の延長と眼球速度の低下を起こした.これらに加えて,go課題で方向を間違えるdirection error,さらにno-goの指示に対してgoしてしまうgo/no-go errorが多発した.以上の結果は,小脳片葉領域と背側虫部-室頂核系が,この課題の実行において異なる役割を持つこと,特に,後者は視覚対象の運動方向の作業記憶と運動準備さらに運動をしないという判断に関わる可能性を示唆する.
|