2006 Fiscal Year Annual Research Report
中枢脱髄疾患の発症機序におけるガングリオシドの果たす役割の解明
Project/Area Number |
17046022
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
楠 進 近畿大学, 医学部, 教授 (90195438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 勝一 近畿大学, 医学部, 講師 (50388526)
高田 和男 近畿大学, 医学部, 講師 (50330262)
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Keywords | 脳脊髄炎 / 糖脂質 / ガングリオシド / 自己免疫 / ミエリン / オリゴデンドロサイト / 糖タンパク / 糖転移酵素 |
Research Abstract |
われわれはGuillain-Barre症候群などの免疫性神経疾患における抗ガングリオシド抗体の解析をしてきたが、最近二種類のガングリオシドの混合抗原(複合体)に対して強く反応する抗体を見出した。二種類のガングリオシドの糖鎖が相互作用して新たなエピトープを形成すると考えられる。とくにGD1aとGD1bあるいはGD1bとGT1bの複合体に対して特異性をもつ抗体は、人工呼吸器を必要とするなどの重症GBSにみられることが多い。またフィッシャー症候群では抗GQ1b抗体の上昇が知られるが、複合体との反応をしらべることにより、GQ1b特異的、GQ1b/GM1特異的、GQ1b/GD1a特異的の三種類が存在することがわかった。ガングリオシド複合体を認識することが、神経障害の病態にどのような意義をもつのか今後の検討が必要である。一方、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の病態とガングリオシドの関わりを解明するために、複合型ガングリオシドを欠くGM2/GD2合成酵素遺伝子ノックアウトマウス(C57BL/6マウスをバックグラウンドとする)をmyelin-oligodendrocyte glycoprotein(MOG)で感作してEAEを作成した。野生型にもノックアウトマウスにもEAEの発症をみたが、ノックアウトマウスでは発症が平均で5日遅延し、有意差がみとめられた。受け身移入実験では、野生型とノックアウトマウス由来のMOG特異的T細胞を、別の野生型に移入しても差異はなかったが、野生型由来の同細胞を、野生型とノックアウトマウスに移入すると、ノックアウトマウスでEAE発症が遅延した。以上から、複合型ガングリオシドを欠くことは、T細胞の活性化には影響しないが、EAEの発症を遅延させることがわかった。すなわち、活性化Tリンパ球の血液脳関門透過性やミエリンへの接着などに影響を及ぼしている可能性が考えられ、その詳細な機序を今後解明する必要がある。
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