2005 Fiscal Year Annual Research Report
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17063001
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
常木 晃 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (70192648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 裕 東京家政学院大学, 人文学部, 助教授 (60261749)
山田 重郎 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 助教授 (30323223)
池田 潤 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 助教授 (60288850)
石田 恵子 財)古代オリエント博物館, 研究部, 研究員 (30132757)
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Keywords | 西アジア / 都市化 / 部族社会 / 農耕社会 / 遊牧民 / ビシュリ山系 / メソポタミア / セトゥルメント |
Research Abstract |
現在、都市の起源として欧米の学界で広く認められているのは、紀元前3,500年ごろのメソポタミア・ウルク期の都市遺跡群である。都市の出現は人間社会のあり方を根本的に変え、これ以降人類の歴史は都市を中心に回っていくことになる。現在でも都市は政治・経済・文化の発信基地となっており、世界の中心は都市にあるといっても過言ではない。それではなぜ都市が歴史上に登場してきたのだろうか。この人類史の一大画期をめぐって、これまでにも様々な仮説が提示され、議論されてきた。環境変化や資源の偏在、戦争、交易など様々な要因が取り上げられてきたが、いまだ十分な回答が得られていないのが現状である。 私たちは、その大きな原因は、メソポタミアにおける都市の発生を農耕社会の発展という視点からしか捉えてこなかったことにあるのではないかと考えている。現代のアラブ社会を見ても、二律背反的な世界が実は1つの社会を形成し、歴史を動かしていることが分かる。都市と砂漠という、全く異なる環境に生きる都市民と遊牧民が、様々な部族社会的ネットワークで結節され、互いに離反集合を繰り返しながら統合的な社会を形成しているのである。これまで都市形成を主題として西アジアで行われた地域研究はかなりの数にのぼるが、そのほとんどは踏査によって各時期の定住集落のセトゥルメント・パターンを把握し、その変遷データから都市形成に迫ろうとするものであった。しかしこうした手法では、遊牧社会のような遊動的社会の存在を把握することはできないし、部族社会の形成やその解明については、ほとんど視野にすら入っていなかった。 本研究ではこうした従来の視点を180度転換させ、都市形成に当たって遊牧社会に代表される部族社会が大きな役割を果たしたことを、考古学的、文献学的、言語学的資料を抽出しながら、明らかにしていく。本研究初年度の2005年度は、各分野での基礎研究をおこなった。
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