2009 Fiscal Year Annual Research Report
技術革新が家庭生活に与えた影響に関する研究―「台所」を中心として―
Project/Area Number |
17074006
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
内田 青蔵 Kanagawa University, 工学部, 教授 (30277686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤谷 陽悦 日本大学, 生産工学部, 教授 (60120549)
安野 彰 文化女子大学, 造形学部, 講師 (30339494)
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Keywords | 技術革新 / 台所 / 流し台 / 便所 / 汚水浄化槽 / 暖房設備 / 温水設備 / 家事教科書 |
Research Abstract |
今年度は、本研究の最後の年であり、今年度の研究内容を遂行するとともにこれまでの研究成果を学会論文として投稿・公表し、併せて、研究成果を報告書にまとめた。家事教科書を史料とする台所分析では、技術史的観点から素材に注目し分析を試みた。その結果、台所空間の材料には明治期には亜鉛やブリキといった耐水性材料が奨励されていたのに対し、関東大震災後は耐火性材料としてタイルやコンクリートが奨励されていることなどを明らかにした。また、流し台の研究では、同じく戦後一般化するステンレスに注目し、その普及過程の分析を行った。その結果、1955年以降にわが国ではステンレスの使用が一般化し、1960年代に一体型シンクの大量生産が開始され、それとともにステンレスが一般家庭に急速に普及したことを明らかにした。便所に関しては、東京府を中心に、戦前期の通達や法令等の情報を精査し、構造に関する規程の変化を整理することができた。また、明治末に導入された汚水浄化槽が、英国のカントリーハウスに用いられたもので、機構もその後に普及するものと同様であったことを明らかにした。また、幾つかの遺構からは、上流邸宅での水洗と汲み取りの使い分けの様子や、戦中期の長屋などで東京市が考案した廃水利用の水洗システムが確認された。また、新たに水を用いる設備としての暖房設備の普及過程として、温水暖房設備の導入過程とともに他の暖房設備の普及状況を整理した。その結果、大正末期頃から中流住宅の暖房設備が発達し、ガスストーブや石炭ストーブが導入され、昭和10年には諸ストーブの国産化が開始され急速に普及すること、ただし、温水暖房に関しては経済的な問題から普及しなかったことを明らかにした。以上の内容を加え、この5年間の研究成果を報告書としてまとめた。
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