2008 Fiscal Year Annual Research Report
内因性カンナビノイドを介する逆行性シナプス伝達のメカニズムとその生理的意義の解明
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17100004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
狩野 方伸 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 教授 (40185963)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
崎村 建司 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40162325)
少作 隆子 金沢大学, 保健学系, 教授 (60179025)
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Keywords | 神経科学 / シグナル伝達 / シナプス / 生理学 / 脳・神経 |
Research Abstract |
脳内に存在するマリファナ類似物質(内因性カンナビノイド)はシナプス後ニューロンから放出され、シナプス前終末のカンナビノイドCBI受容体に作用して、神経伝達物質放出の減少を引き起こす。本研究では、内因性カンナビノイドのシナプス伝達調節の機構とその脳機能における役割の解明を目指している。平成20年度の研究から、以下の点が明らかになった。 1.2-AGの合成酵素diacylglycerol lipase a(DGLa)のノックアウトマウスを作製した。このマウスは成獣まで生存可能で、特に顕著な行動学上の変化は認められなかったが、小脳、海馬、線条体の2-AG含量は野生型マウスの20%ほどに減少していた。 2.DGLaノックアウトマウスの培養海馬ニューロンから抑制性シナプス後電流を記録し、脱分極による細胞内Ca^2+濃度上昇に引き続いて起こる逆行性シナプス抑圧を調べたところ、これがほぼ完全に消失していた。 3.2-AG分解酵素のmonoacylglycerol lipase(MGL)のノックアウトマウスを作製した。このマウスは成獣まで生存可能で、一見して行動学上の変化は認められなかったが、小脳、海馬、線条体の2-AG含量は野生型マウスの4倍に増大していた。 4.2-AG分解酵素のmonacylglycerol lipase(MGL)のノックアウトマウスにおいて、小脳プルキンエ細胞の脱分極による興奮性平行線維シナプスの逆行性抑圧の持続時間が長くなっていた。 5.MGLノックアウトマウスの小脳機能を調べた。roto-rod testで野生型に比べて成績が向上していたが、小脳依存性の運動学習である瞬き反射の条件づけでは、学習の獲得は正常であった。 本研究から、小脳や海馬において、逆行性シナプス抑圧を担う内因性カンナビノイドは2-AGであることが確実になった。
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Research Products
(27 results)