2009 Fiscal Year Annual Research Report
強誘電性長距離秩序形成と競合するコヒーレント量子ゆらぎダイナミクスの研究
Project/Area Number |
17104004
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
八木 駿郎 Hokkaido University, 名誉教授 (30002132)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武貞 正樹 北海道大学, 大学院・理学研究院, 講師 (30311434)
伊藤 満 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 教授 (30151541)
小野寺 彰 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (40142682)
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Keywords | 量子常誘電体 / 量子強誘電体 / 量子ゆらぎ / ソフトモード / 時間-振動数領域広帯域分光法 / ミリケルビン領域 / フォノン / 完全ソフト化 |
Research Abstract |
1.研究目的と実施計画: 本研究課題の目的である「強誘電性長距離秩序形成と競合する量子ゆらぎダイナミクスの解明」のためには、レーザー光を量子常誘電体試料に入射してその散乱光を分光することで量子ゆらぎのスペクトルを観測することが本質的に重要である。そのために、(1)量子常誘電体を極低温に保ち、熱ゆらぎの効果を充分に低減すること、(2)可能な範囲で強度の大きいレーザー光を入射しS/N比の良いスペクトルを観測すること、(3)未知の量子ゆらぎスペクトルを広いダイナミックレンジにわたって探索すること、が必要である。 2.本年度の研究成果: 実施計画中の(1)と(2)は、互いに相矛盾する。すなわち、試料を4K以下の極低温状態に保つためには、外部からの熱の流入を厳重に遮断する必要があり、一方で光散乱スペクトルの強度は入射光強度に比例するので、精度の良いスペクトルを観測するためには、充分に大きな強度の入射レーザー光の照射が必要である。これが本課題における最も困難な問題点であった。今年度の研究の成果として、特殊な極低温光学クライオスタット(EREC)を独創的な着想に基づき発案し、それに基づき設計・製作した結果、極低温を保ちながら精度の良い光散乱スペクトルを観測する技術が完成した。実施計画(3)は、振動数領域の分光法と時間領域の分光法の結合として、1台の除振台上に設置されたコンパクトなシステムとして実現した。これは、世界初の具体的成功例である。 3.研究成果の意義とその重要性 (1)極低温光散乱分光法の完成:これは従来相矛盾する因子により不可能とされていた極低温領域の分光法を確立したことであり、その学問的重要性は大きく、従来熱の遮断にのみ留意した静的実験が多く行われていた極低温物性に、動的な物性解明を可能にする点で大きな意義がある。(2)得られた11-12桁のダイナミックレンジは、フォノン以外の未知のスペクトルとしての量子ゆらぎスペクトルの観測に大きな効果を与えると期待される。
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Research Products
(5 results)