2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17320008
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
大庭 健 専修大学, 文学部, 教授 (00129917)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂井 昭宏 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20092059)
清水 哲郎 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (70117711)
熊野 純彦 東京大学, 大学院・人文社会研究科, 助教授 (00192568)
川本 隆史 東京大学, 大学院・教育研究科, 教授 (40137758)
水谷 雅彦 京都大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (50200001)
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Keywords | 自己知 / 一人称権限(特権) / 表出主義 / 自己決定 / 関係の非対称性 / 適応的選好形成 |
Research Abstract |
自己知の哲学的問題は、多岐にわたるが、現代の哲学的状況で深刻なのは、観察にも・観察からの推論にもよらずして得られる信念が、いかにして事実についての知識を与えうるのか、という心の哲学・知識の哲学の双方にまたがる認識論・知識論の問題である。とりわけ、1-1.デカルト主義的な内観(自己知の知覚モデル)による一人称権限(first person authority)の基礎付けには、周知のとおりの諸問題がはらまれているが、しかし他方では、1-2.その批判を徹底していくと、一人称の心理言明は、事実を描写するものでなく、態度の表出である、とするいわゆる表出主義(expressism)に行き着くが、こうした主張にしたがうなら、日々のコミュニケーションにおける一人称権限の説明は、かなり反直観的にならざるをえない。半年あまりの共同研究をつうじて、こうしたディレンマ状況の構造がかなり明らかになったと同時に、倫理学的にはさらに、1-3.一人称の心理言明は、それが心的事態の描写であるとしても、しかし世界の事実の描写とは異なった認知的な責任がともなう。このことが、従来あまり重視されていないことも、あわせて明らかになった。 「本人による自己決定の尊重」にはらまれている哲学的・倫理学的な問題性にかんしては、分担して諸分野での事例の収集・分析にとりかかったばかりであって、未だ確たる共通の見解を得るにはいたっていない。しかし、この間の討論をつうじて、「自己決定の尊重」がいわれるとき、2-1.決定する当人と、そのひとに関る人々との関係が、しばしば極端な非対称性を帯びていることが、多くの問題を生み、またそのことと双体的に、2-2.決定する本人の自己知がある制約をこうむっていると、いわば適応的選好形成と類比的な問題が生じることがあり、2-3.これら二つのことが、「ケア」と呼ばれる関わりにおける重大な課題を生じさせる、といった一連の仮説的な見通しが得られた。
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Research Products
(6 results)