2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17320008
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
大庭 健 専修大学, 文学部, 教授 (00129917)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂井 昭宏 北海道大学, 大学院文学研究科, 教授 (20092059)
清水 哲郎 東北大学, 大学院文学研究科, 教授 (70117711)
熊野 純彦 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 助教授 (00192568)
川本 隆史 東京大学, 大学院教育学研究科, 教授 (40137758)
水谷 雅彦 京都大学, 大学院文学研究科, 助教授 (50200001)
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Keywords | 自己知 / 一人称権限(特権) / 表出主義 / 自己決定 / 関係の非対称性 / 適応的選好形成 |
Research Abstract |
自己知という一見平凡な事柄は、"観察にもよらず観察からの推論にもよらぬ信念が、いかにして事実についての知識を与えうるのか"という、厄介な哲学的問をはらんでいる。一方では、1.デカルト主義的な内観の直接性による一人称権限(first person authority)の基礎付けには多大の問題が含まれており、他方では、2.デカルト主義的な内観の批判を徹底した、いわゆる表出主義(expressivism)にしたがうなら、日々のコミュニケーションにおける一人称権限の説明は、かなり反直観的となる。本年度は主として、従来の表出主義の難点の超克をうたう"ネオ表出主義"の理論を検討してきたが、目下のところ必ずしも全面的な説得力をもつには到っていないように見受けられる。少なくとも、一人称の心理言明が、日々のコミュニケーションにおいては心的状態の描写としても理解されると同時に、世界の事実の描写とは異なった認知的な責任がともなう、という事態の十全な解明にはいたっていない、ということが明らかになった。 「本人による自己決定の尊重」にはらまれている哲学的・倫理学的な問題性にかんしては、本年度は主として教育の現場におもむき、生徒の自己評価のあり方との関連に焦点を合わせて、高校に常駐した研究協力者たちの報告をうけて、さまざまな事例分析を試みた。その結果、いわゆる中低位校における生徒の自己認識において、周囲からの負の評価が内的に増幅されていくさいの構造的な諸問題がかなり明らかになってきた。しかし目下のところ、「生徒の自己決定」にはらまれる問題、とりわけ適応的専攻形成と類比的な諸問題の全容の解明にはいたっていない。
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Research Products
(4 results)