2005 Fiscal Year Annual Research Report
中国14巨大都市、済州島、父島における有機エアロゾル組成と吸湿特性の比較研究
Project/Area Number |
17340166
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
河村 公隆 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (70201449)
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Keywords | 中国エアロゾル / 環境分析 / 地球化学 / 大気化学 / 有機物 / バイオマス燃焼 / 光化学反応 / 化石燃料の燃焼 |
Research Abstract |
本研究では、中国の巨大都市と西部北太平洋域の大気エアロゾルに注目し、そこに含まれる有機物の組成と濃度分布の特徴を明らかにするとともに、有機エアロゾルの大気環境へのインパクト、特に、その吸湿特性と雲凝結(水蒸気凝結)能力を評価することを大きな目標とする。世界で最も人口が集中しなおかつ急速な工業化が進んでいる中国内陸部と沿岸部の14巨大都市(北京、重慶、上海、香港など)に焦点をあてそこで採取されたエアロゾル試料を分析し、化合物レベルでの有機エアロゾルの組成解析を行うことを目的とした。本年度は、南京で採取した冬と夏のエアロゾル試料を分析し、100種を超す有機物の組成解析を行った。 エアロゾル試料中で最も高い濃度を示した化合物はレボグルコサンであった(Levoglucosan,160-484ngm^<-3>,av. 302ngm^<-3>)。この化合物は、セルロースの燃焼で生成することがわかっておりバイオマス燃焼のトレーサーである。この結果は、中国においては薪など生物燃料が主要なエネルギー源として使われていることと一致しており、同時に、それが大気汚染の重要なソースとなっていることを明らかになった。また、リグニンの熱分解生成物であるバニリン酸(vanillic acid,21ngm^<-3>)、シリンガ酸(syringic acid.14ngm^<-3>)や、松脂の燃焼の際に(熱分解で)生成するデヒドロアビエチン酸(dehydroabietic acid,64ngm^<-3>>も検出された。一方、植物起源の脂肪酸も高い濃度で検出された。しかし、ノルマルアルカンは植物の特徴的な奇数優位性を示さず、石炭・石油など化石燃料の燃焼による寄与が大きいことを明らかにした。冬においては、化石燃焼燃焼とバイオマス燃焼が2つの有機エアロゾル生成のソースであることがわかった。また、夏の試料では、シュウ酸など低分子ジカルボン酸が高い濃度で検出されており、光化学反応による有機エアロゾルの生成が重要であることも同時に明らかとなった。 今回検出したほとんどの成分で昼間よりも夜間の方が2倍程度高い濃度を示した。この結果は、冬季の夜間の気温低下によって逆転層が形成された結果、汚染物質が地表付近に蓄積されやすい状況であったことを意味している。また、夜間に汚染物質の強い排出源(暖房のための生物燃料の燃焼など)がある可能性も指摘される。本研究の結果は、国際誌Environ. Sci. Technol.に発表された。
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Research Products
(7 results)