Research Abstract |
わが国の主要果樹3種(ナシ/リンゴ/カンキツ)と周辺部におけるカブリダニ類(和名カブリダニ部を以下省略)の発生状況を検討するとともに室内実験を実施してその行動を観察した。 1)奈良県五條市のナシ園(二十世紀)で,慣行防除区と総合防除区を設け,ハダニ類の発生消長と天敵の種類相及び大まかな発生消長を比較した。カブリダニの種類相を見ると,慣行区では7月下旬ではケナガとミチノクが約50%ずつ発生したが,10月中旬にはミヤコが96%を占めた。一方,総合区では7月下旬にはケナガ,フツウ,コクズケがそれぞれ30%ずつに発生したが,10月にはフツウの発生が87%になり,ミヤコも10%の構成率を示した。 2)東北地方のリンゴ園周辺に自生する木本6種を選定し,11地点から葉を毎週採集して,葉上に生息するダニ類を計数した。自然植生では,カブリダニ類の中ではリンゴハダニおよびリンゴサビダニ捕食性を示すフツウが最も多く,次にリンゴサビダニ捕食性を示すイチレツが多く採集された。フツウとイチレツは春から徐々に増加する傾向を示した。 3)西南暖地のカンキツにおけるカブリダニ類利用の基礎資料として,福岡,佐賀,長崎,熊本,鹿児島諸県のカンキツ園でその種構成を調べた。近年分布を拡大し,ハダニ類の有望な天敵であるミヤコは,福岡県,佐賀県,長崎県,熊本県で確認された。カブリダニの種構成は,主に園の管理体系に影響され,放任園ではニセラーゴ,慣行防除園ではミヤコが優占した。また,殺虫剤無散布園でのカブリダニの発生消長調査では,ニセラーゴは周年発生がみられ,生息場所としてカンキツへの依存度が高い一方,ミヤコは発生時期が6〜7月に限られ,カンキツは一時的な生息場所にすぎないと考えられた。 4)室内実験により、7種カブリダニのナシ枝上での人工トラップ(Phyto trap)利用状況を観察した。トラップ内への定着率は種間で異なり、本トラップを利用した野外観察の結果を解析する際の基礎資料となろう。
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