2007 Fiscal Year Annual Research Report
拡大EUの「欧州近隣諸国政策」-イースタン・ディメンションをめぐる政治過程
Project/Area Number |
17402013
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
六鹿 茂夫 University of Shizuoka, 国際関係学研究科, 教授 (10248817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 啓貴 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (80150100)
小久保 康之 静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (60221959)
廣瀬 陽子 東京外国語大学, 地域文化研究科, 准教授 (30348841)
佐藤 真千子 静岡県立大学, 国際関係学研究科, 助教 (40315859)
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Keywords | 欧州近隣諸国政策(ENP) / イースタン・ディメンション / 黒海シナジー / 凍結された紛争 / GUAM / 民主化支援 / EUBAM / 4つの空間 |
Research Abstract |
19年度は、欧州近隣諸国政策(ENP)のイースタン・ディメンションをめぐる政治過程について、昨年度まで不十分であった諸点を補うべく海外調査研究を行い、以下の結論を得た。1.EUはENPの二国間関係に加え、黒海シナジーという多国間協力にも乗り出した。2.ENPのアクション・プランが南コーカサスにも適用されるに至った。3.EUはモルドヴァのトランスニストリア紛争解決にも一層積極的となり、EUBAM(国境支援使節)を送って同地の闇経済摘発に努め、同地の民主化に貢献し始めた。だが、EUBAMは、他方では、同地のスミルノフ「大統領」が権力基盤を再強化する根拠としても使われた。4.EUとロシアの関係では、貿易は増大したものの、深刻な問題が露呈した。エストニアのロシア人が少数民族の権利保障を要求し、エネルギー問題もEUとロシアの間で満足のいく解決には至らなかった。さらに、EUとロシアの間で締結された「4つの空間」ロードマップも、人権やマスメディアの自由および凍結された紛争をめぐる溝は埋まらなかった。5.他方、凍結された紛争をめぐるOSCEとEUとの関係では、主たるアクターはOSCEであり、EUはそれを後方支援する関係にあることが確認できた。よってOSCEの紛争解決における重要性は減るどころかむしろ増していると言える。6.とはいえ、凍結された紛争に関して最大の役割を果たしているのは依然としてロシアである。ロシアはコソヴォの独立と凍結された紛争とを連携させ、コソヴォが独立すれば凍結された紛争地域の独立も認めるべきであると主張していたが、コソヴォ独立後は前言を翻し、ロシアは領土保全の維持を主張し始めた。このロシアの態度変化が、凍結された紛争に与える影響は極めて重要である。7.米政府の戦略的重点地点であったウクライナ・ベラルーシ・モルドヴァに対する「市民社会」構築のための支援が大幅に削減したことに呼応し、近年ポーランドは米援助の真空地域を埋めるべくODA供与国となった。8.米国の対黒海地域政策に関しては、ポーランドの米系NGOへの支援を通したウクライナの民主化支援や、チェコおよびポーランドへのレーダー基地の設置計画が重要課題である。これに対し、ロシアはアゼルバイジャンのレーダー基地を代替案として提示しているが、これは米露関係が中欧と南コーカサスという二つの広範な地域にまたがって展開されている証左であり、広域ヨーロッパを見る際の重要な分析視角を我々に提示するものである。
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Research Products
(11 results)