2005 Fiscal Year Annual Research Report
オープンアクセス状況下における学術情報流通変容の総合的研究
Project/Area Number |
17500160
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
倉田 敬子 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (50205184)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 修一 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (50134218)
村主 朋英 愛知淑徳大学, 文学部, 助教授 (70230000)
松林 麻実子 筑波大学, 図書館情報メディア研究科, 講師 (10359581)
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Keywords | オープンアクセス / 学術情報流通 / オープンアクセス雑誌 / 生物医学 / 哲学 / 電子メディア利用 / 研究者 / 情報利用行動 |
Research Abstract |
今年度は、主として以下3件の研究調査を行った。 1)日本における哲学研究者の電子メディア利用の動向調査 日本の大学に所属する哲学研究者793名に対して、(1)Webサイト、電子ジャーナル等の電子メディアの利用、(2)研究成果の公表方法、(3)学術雑誌と図書の利用と入手手段に関する総計25問の質問紙調査を実施した。その結果223名から有効回答を得られた(回収率29.6%)。主な結果として研究機関のサイト等を利用している研究者は半分程度いたが、電子ジャーナルやデータベースの利用は低調であった。情報入手としても、成果発表手段としても学術雑誌よりも図書を重視しており、このことが電子メディア利用が普及していない一因と考えられる。 2)オープンアクセスジャーナルの調査 Directory of Open Access Journalsに収録されていた1603誌のオープンアクセス雑誌に関して、(1)出版国・出版者の種別、(2)冊子体の有無、(3)2004年度公開論文数、(4)エンバーゴの状況等について調査をした。その結果、全体の約13%が2003年以降論文を公開しておらず雑誌として刊行が継続しているかどうかが疑問視される状況であり、論文を閲覧するのに有料登録が必要な雑誌も存在した。年間150論文以上を公開していた雑誌は52誌、全体の3%とごく少数で、全体の54.3%が25論文以下しか公開していない小規模な雑誌であった。これらの調査結果をまとめるとオープンアクセス雑誌は大きく2つのパターンに分けられた。一方は、冊子体が存在し規模は中規模でエンバーゴが半年からそれ以上、つまり伝統的な学術雑誌がオープンアクセスとなった雑誌であり、他方は冊子体が存在せず、規模は小規模で即時公開する新たに創刊された雑誌であった。 3)生物医学分野におけるオープンアクセスの現況調査 NLMのオープンアクセスポリシーが2005年5月から開始されるなど現在多くの注目が集まっている生物医学分野において、現在どのぐらい論文がオープンアクセスとなっているのかの状況を調査した。Web of ScienceではなくPubMedに2005年1月〜9月に収録されている論文約1万件を抽出し、2006年1月〜2月に、オープンアクセスとして閲覧できるかを調査した。4613件の分析を終えた時点で、全体の約25%がオープンアクセスとして入手可能であり、半分が電子ジャーナルとして有料でアクセス可能、約22%がオンラインで入手不可能であった。オープンアクセス論文の約75%はオープンアクセス雑誌であり、機関リポジトリや著者サイトから入手できるものは少数に留まった。この結果をまとめたものをAmerican Society for Information Scienceの学会口頭発表へ申込を行った。
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