2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520025
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中川 純男 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (60116168)
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Keywords | ストア哲学 / 言語理論 / 存在論 / ヘレニズム |
Research Abstract |
ストア哲学における存在理解は、その言語理論と密接に関係している。命題における主語・述語はそれぞれ物体とその物体が有する性質を表していると考えられ、命題相互の関係によって構成させる論理は、さまざまな性質を具えた物体相互の関係を表していると考えられているからである。したがって物体の全体からなり、物体の相互関係によって変化してゆく世界は、論理的な関係によって結ばれた一連の命題群によって記述されるはずであるとストア派は考えた。本年度はストア派の倫理学において、とりわけ言語理論との関係が密接であると思われる問題、存在の分類と行為の分類に注目し、これらの分類整理の前提となる言語理論を解明した。存在の分類は、言語現象である肯定否定と密接な関係にあるが、このことはストア派も強く意識していたと思われる。なぜなら、「〜であるもの」「〜でないもの」という二分法の他に、ストア派に特徴的な三分法、すなわち「〜であるもの」「〜でないもの」の他に「〜であるのでも、でないのでもないもの」を含めた分割法があるが、これは言語現象である肯定否定がそのまま事象に適用されないことを意識した分類であると考えられるからである。古代ギリシア哲学においては、しばしば肯定否定は「反対」と考えられ、事象として反対のものが、肯定否定と同じように中間を許容しないのではないかという問題が、関心をもって論じられた。ストア派はこのような問題を意識しつつ、上記の三分法を提出している。
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Research Products
(3 results)