2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520025
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中川 純男 Keio University, 文学部, 教授 (60116168)
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Keywords | ストア派 / 目的 / 善の概念 / プラトン / ゴルギアス |
Research Abstract |
初期ストア派の倫理学において、言語理論との関係がとりわけ密接であると思われる問題、すなわち行為の分類の問題に注目し、これらの分類整理の前提となっている知見の解明を目指した。このことを考える上で重要なのは生の目的と行為の選択との関係をどのように捉えるかという問題である。この問題を最初に顕在化させたのはプラトンの『ゴルギアス』であると思われる。『ゴルギアス』のソクラテスは、存在するものを、善いもの、悪いもの、そのいずれでもないものに分け、目的となるのは善いものであり、目的のために選ばれるものは善悪いずれでもないものであって、善悪いずれでもないものは、それ自体としては善くも悪くもないが善い目的のために善いものとして選ばれると言う。プラトン自身は指摘していないが、ここで「善い」という概念が二通りに用いられていることが重要である。すなわち、目的となるものが善いものと言われるだけでなく、目的のために選ばれるものも善いと言われているからである。アリストテレスはこの区別を明確に概念化し、善に「それ自体として善いもの」と「それ自体として善いもののゆえに善いもの」とを区別した。善に二通りの意味を区別することはアリストテレス以後、哲学各派に受けつがれた。用語の厳密な使用を意図するストア派は、この二通りの善を同じ名で「善いもの」呼ぶことを斥け、目的となるもののみを善と呼び、目的のために選ばれたものは「優先されるもの」と呼んだ。「他のものと比較したうえで選ばれたもの」という意味である。
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