2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520302
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Research Institution | Chikushi Jogakuen University |
Principal Investigator |
迫野 虔徳 筑紫女学園大学, 文学部, 教授 (60039972)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 智之 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 教授 (30214993)
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Keywords | 方言史 / 交隣須知 / 倭語類解 / 日暮芥草 / 九州方言 / ゴンザ資料 / おもろさうし / 五段化 |
Research Abstract |
本研究は、地方語文献を発掘精査して方言史を再構、これまでの中央語中心の日本語史を見直すことを目的にしたもので、比較的地方語文献資料の豊富な九州地方を中心に取り上げた。 (1)朝鮮語通辞養成のためのテキスト『交隣須知』の成立、言語の性格についての調査考察をすすめた。諸本の収集、写本相互の関係などの基礎的作業を行い、朝鮮資料『倭語類解』との関係を手がかりにその成立について考察し、雨森芳州製作説に疑問を呈した。(『交隣須知』の成立存疑・2006)また、『交隣須知』のことばと対馬方言との関連を実証する上で貴重な江戸時代の対馬の方言書『日暮芥草』の解読考察をすすめた。全20巻のうち現存するもの10巻であるが、それでも九州地方における江戸時代最大の方言書で、広く紹介される意味は大きい。 (2)『交隣須知』『日暮芥草』に見られる動詞活用には、九州方言としてはむしろ不審とも言える一段化例が顕著に見られる。江戸時代の鹿児島方言を反映していると思われるゴンザ資料(ロシア資料)、琉球の『おもろさうし』の動詞活用などと考えあわせる五段化を軸にした動詞活用の大きな動きを予想できそうで、その見通しのもとにそれぞれの資料の分析と関連についての考察をすすめた。 (3)ゴンザ資料のキリル文字による表記からうかがえる鹿児島方言の音韻傾向と現代琉球方言との間に重要な関連があると考えられたために数度にわたる琉球方言調査を試みた。『おもろさうし』の表記の問題、『おもろ』に頻出する敬語「おわる」と八重山方言との関連、指示詞の問題など多様なテーマについて調査考察をすすめた。琉球の調査については、久保智之研究分担者、荻野千砂子研究協力者の全面的な支援をうけた。
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