2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520302
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Research Institution | Chikushi Jogakuen University |
Principal Investigator |
迫野 虔徳 Chikushi Jogakuen University, 文学部, 教授 (60039972)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 智之 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 教授 (30214993)
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Keywords | 方言史 / 琉球方言 / 対馬方言 / 日暮芥草 / 九州方言 / 交隣須知 / おもろさうし / 五段化 |
Research Abstract |
琉球方言については,早く本土方言と分離した大方言として本土全体のことばと対比してその古態性や独自性が強調されることが多かった。たしかにそのよ,うな面もうかがえるが九州方言との共通性もまた強く感じられる。この連続性は,琉球方言の性格をときほぐすもう一つの重要な手がかりであるはずである。琉球には,『おもろさうし』のような重要な古文献があり,同じころ以降の九州は全国的にみても地方語文献がかなり豊富な地域である。本研究は,この双方の文献を活用した方雷史を考えることで,両地域の方言の性格を少しでも明らかにしようとしたものである。 対馬の江戸時代の方言の研究をかなり進めることができた。対馬の朝鮮語通辞養成のための教科書『交隣須知』の日本語が対馬方言であることを同じく対馬の方言書『日暮芥草』との対比で明らかにした。このことは同時に『交隣須知』と密接に関係して成立した朝鮮の日本語辞書『倭語類解』のことばの性格の一端を考えることになった。これら三書に共通する一見二段活用の一段化とも見える動詞活用の特色が一段化現象というよりラ行五段化との関連で捉えるべきことを提案した。このラ行五段化は九州西南部から琉球に連なる現象で,琉球の変化は古語「おはす」のラ行五段化したおもろさうしの「おわる」に象徴されていることを説いた。日暮芥草に見えるkw>pの音変化は,琉球八重山方言などのw>bの変化を思わせる。この変化は,琉球方言に「イ・イ」「ヲ・オ」の別などを残したが,鹿児島のゴンザ資料はこのこととの関連を思わせる記述を残している。琉球方言の調査については,久保智之研究分担者,荻野千砂子研究協力者の全面的な支援を受けた。
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