2007 Fiscal Year Annual Research Report
生活文化産業の創出による中山間地域経済の再構築に関する研究
Project/Area Number |
17520538
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡橋 秀典 Hiroshima University, 大学院・文学研究科, 教授 (00150540)
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Keywords | 人文地理学 / 農村地理学 / 中山間地域 / 生活文化産業 / 地域経済 |
Research Abstract |
平成19年度は最終年度であり、知識経済化にともなう中山間地域の変動に関する理論的な考察を深め、その成果を下記のような内容で地理科学学会の知識経済化に関するシンプジウムで発表した。また、補足的に博物館を軸とした中山間地域経済の振興事例についての調査も行った。 1.知識経済化時代における中山間地域経済の展開についての理論的考察 新たな産業部門として、農林業、ツーリズム、そして自然環境・文化などの地域資源が密接に関わり合った「総合生活文化産業」を提起し、このような産業振興に共通してみられるのが、「ネットワーク」、「ブランド」、「コミュニケーション」、「生活文化」、「ローカル」などの新たな要素であることを明らかにした。それゆえ、この種の産業を立ち上げ担う主体には、知の創造や学習が強く求められることを指摘した。また、このような産業振興は地域の自然・文化・景観と密接に関わっているため、環境保全や景観保全などへの取り組みも欠かせず、これらの領域には、環境保全に資する政府の政策や、ボランタリーな都市住民との連携が大きな意義をもつことを述べた。「総合生活文化産業」の振興は、自発的な要素が強く、従来の行政主導型の開発になじまない面を多分にもつ。知識経済化時代の中山間地域振興において、行政と地域住民がどのように関わり、また域外の都市住民とどのように連携するのかが課題となると結論した。 2.博物館を用いた生活文化産業の振興 博物館は、本来生活文化産業の振興に関わる面があると考えられる。そこで、大分県の1地方博物館の事例を調査した。その結果、地域の生活文化の理解に役立っていることを確認したが、直売所などの経済活動とのリンクが弱いことも判明した。この改善のためには博物館側の柔軟な姿勢、経済団体の生活文化への理解、財政悪化に悩む地方自治体の対応が求められることを指摘した。
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Research Products
(1 results)