2007 Fiscal Year Annual Research Report
「ソーシャル・キャピタル論」の政治思想史上の意義の解明
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17530096
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
辻 康夫 Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 教授 (20197685)
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Keywords | アソシエーション / デモクラシー / アイデンティティ |
Research Abstract |
19年度は、前年度に引き続き、一方で、リベラリズムの潮流における公共圏、市民社会の概念の変遷史との連関をつけるとともに、他方では、近年の論争、具体的にはアイデンティティと社会統合、排除と包摂、経済や福祉をめぐる論争との関係などについて、分析を行った。前者に関しては、アソシエーショニズムの思想は一方で極端な個人主義から生じる問題の克服、他方では、社会の分断の回避を関心としてきたが、後者の点から見ると、近代史を通じて、自発的なネットワークが秩序を形成するという思想と、社会が宗派や階級など融和不可能な諸集団に分割されているという思想とが、せめぎ合ってきたことが認識され、そのどちらが優位に立つかによって、アソシエーショニズムの説得力が大きく規定されるという認識に至った。後者の点に関しては、20世紀末以降の議論が、一方で脱産業化、福祉国家の後退、グローバリゼーションなどの社会経済的環境の変化に規定されていると同時に、他方でその議論の方向が、60年代以降の文化変容への評価に強く規定されていることを認識するに至った。すなわち60年代以降の文化変容は、個人主義の深化とアイデンティティ・ポリティクスの出現の背景にあり、これらはしばしば伝統的なアソシエーションの衰退の一因とされるが、この変容の必然性をめぐる評価のあり方によって、アソシエーションをめぐる議論の方向が規定される。こうした視覚をとることにより、今日のアソシエーショニズムを、福祉国家論などとともに、多文化主義、アイデンティティ・ポリティクスなどとの関係で評価することが可能になる。
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Research Products
(2 results)