2005 Fiscal Year Annual Research Report
中小企業における労働者の技能形成と労働組合運動に関する実証的研究
Project/Area Number |
17530202
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上原 慎一 北海道大学, 大学院・教育学研究科, 助教授 (10269136)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
椎名 恆 北海道大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (50281762)
吉田 誠 香川大学, 経済学部, 教授 (90275016)
兵頭 淳史 専修大学, 経済学部, 助教授 (30294862)
|
Keywords | 中小企業 / 技能形成 / 労働組合 / 個人加盟組合 / 大田区 / 印刷産業 |
Research Abstract |
本研究課題は、次に示す二つの相対的に異なる研究領域からなる。第一は中小企業の存立条件の変化と労働者の技能形成のあり方の解明であり、第二は中小企業分野における労働組合への労働者の組織化の可能性の解明である。本年度及び次年度は、それぞれの領域において調査、資料収集、資料整理を進めながら、最終的に統合を試みる。 第一の課題について、本年度は東京都大田区の零細中小企業、工業団体、行政機関等の聞き取り調査を進めた。その際、大企業と直接取引関係を有する「口座」保有企業が、集積地の中で企業間の分業関係の形成にとって重要な役割を果してきたことに着目した。大都市圏の大規模製造業の再編が進んでいる中で、その機能が「口座」保有企業が集積への需要の呼び込みや地域内分業関係の形成において、不安定化の要素を含みながら、より積極的な役割を有するよう迫られていることが明らかになった。今後は、そうした新たな役割に対応する「口座」保有企業の労働力の質や労働力編成の変化について明らかにする必要がある。 第二の課題について、本年度は中小企業労働者の労働組合、なかでも中小企業比率の高い印刷出版産業における労働組合の、高度成長期を中心とする歴史的実態について、主に全日本印刷出版産業労働組合総連合(全印総連)のとくに東京地方連合会およびその加盟組合に関する史資料調査を中心として研究を進めてきた。現在までの作業のなかで明らかになりつつあるのは、1960年における政治運動の活発化が60年代前半期において印刷出版産業中小企業における組織化の進展と労働争議の活発化をもたらしたこと、60年代中盤には中小企業労働者を主たる組織対象とする個人加盟労組の運動が印刷産業においても一定の進展を見せるが、同年代後期には既存の地方組織との関係の上で軋轢を生じたことなどにより運動が限界に達したことである。今後は、個人加盟労組と中小企業別労組との関係や性格の異同をより実態に即して明らかにしてゆくことが課題となろう。
|