2007 Fiscal Year Annual Research Report
非血縁親子が育む家族機能と子どもの親理解・自己理解
Project/Area Number |
17530490
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Research Institution | Kamakura Women's University |
Principal Investigator |
富田 庸子 Kamakura Women's University, 児童学部, 講師 (10288102)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚田 みちる 中京大学, 心理学部, 助手 (20410631)
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Keywords | テリング / 家族機能 / 非血縁家族 / 親子関係理解 / 自己理解 / 養子縁組 |
Research Abstract |
幼い子どもを養子に迎えて育てている家族において、育て親が子どもに、生みの親が存在する事実とそれに関わることがらを日常生活のコミュニケーションを通じて語り続ける親子の共同作業を「テリング」とよぶ。本研究は、育て親が子どもの発達に伴ってどのようにテリングを行っているのか、子どもたちがテリングを通じてどのように自己理解や親子関係理解を深めていくのかを明らかにすることにより、家族機能の生成プロセスを検討することを目的としている。 当該年度は、前年度までに引き続いて、育て親家族(当該年度開始時点で137家族に協力依頼)によって記録されたテリングエピソードの分析と、家庭訪問による面接調査(当該年度内に13件)を主軸とした。 その結果、育て親は、子どもの発達段階や個性にあわせて工夫しながらテリングを行っていることが確認され、(1)乳児期のテリングは、子どもの理解を期待するよりも、育て親の自覚を促し、生みの親のことを口に出す練習としての意味を持っていること、(2)3歳頃と就学頃にテリングの節目を感じる育て親が多いこと、(3)テリングの進展においては育て親たちのネットワークが重要なサポート資源となり得ること、などが明らかになった。また、子どもの理解の進展においては、個別性を超えた心理発達プロセスとして共通に理解できる点がみられた。すなわち、(1)育て親からの一方向的なテリングから育て親-子ども間の双方向的なテリングへと変化すること、(2)弟妹を迎えたり生みの親に会うといった経験が、理解深化の機会となること、(3)テリングを嫌がる時期が存在すること、(4)周囲との違いに気づき始めることによってテリングに関わる態度が複雑化すること、などである。子どもの発達にとって必要な家族機能を検討する上で、育て親がテリングを通じて子どもに示す「伝え続け、聞き続ける」という態度の重要性が、改めて確認された。
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