Research Abstract |
平成19年度の研究では,「CASを活用した代数的活動をとらえる枠組みの構築に向けた基礎的研究」を継続的に進めるとともに,「CASを活用した中学校の代数的活動の教授実験」を中学3年を対象に行い,その考察を進めた。 「CASを活用した代数的活動をとらえる枠組み」の考察については,KieranやDrijversらによる先行概究の考察を継続的に進めるとともに,学習の質的深化という視点からの代数的活動の考察と事例開発を行っている。 「CASを活用した中学校の代数的活動の教授実験」については,「CASを活用して自然数の素因数分解に関わる性質を探究する」と「CASを活用してX^n-1の形の式の因数分解に関する性質を探究する」という2つの段階からなる教授実験を,中学3年を対象に行った。前者においては,111111,1111111など同じ数が連続してできる自然数を,CASを活用して素因数分解し,その結果から浮かび上がる数の性質や規則性を発見する活動などを行っている。後者においては,段階的にX^n-1の形の式の因数分解を行いながら,多項式の因数分解に対する意味形成とx^n-1の因数分解の性質に関わる洞察を行っている。なお,教授実験では,紙と鉛筆による方法とCASによる方法を比較対照し,関連づける活動を重視した。一連の教授実験を通して,生徒の因数分解に対する認識のゆらぎ,CASの活用と他者との議論を経た因数分解に対する認識のゆらぎの克服,x^n-1の因数分解の性質に関わる洞察についての中学生なりの可能性,数の素因数分解との関連を図ろうとする姿勢などがみられた。 また,静岡大学教育学部2年の授業,数学科教科内容指導論において,自然表示関数電卓の使用を前提とした中学校から高等学校の必修数学までの範囲での,教材開発に焦点をあてた授業を展開した。例えば,Five steps to Zeroに関わる教材解釈,倍数の判別法などを起点とした自然数の性質の探究,統計データを活用して代数の授業に活かす教材の開発などを行った。
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