Research Abstract |
光学ガラスの延性モード研削をダイヤモンドホイールで実現するためには,砥粒切込み深さを臨界切込み深さ以下に設定しなければならない.そのためには,砥粒切れ刃先端をホイール作業面に揃える切れ刃トランケーション法に注目している. 昨年度は,予め切れ刃形状を測定した単結晶ダイヤモンド砥粒を用いた光学ガラスの単粒切削実験と単結晶ダイヤモンド平バイトを用いた切削実験を行い,延性モード加工から脆性モード加工に移行する臨界切込み量を検討した. 今年度は,昨年に引き続き単粒工具を用いたフライカット実験を行い,ダイヤモンド切れ刃が光学ガラスの延性モード研削に及ぼす影響を検討した.次に,硬脆材料の微視的変形挙動特性を理解するために,各種光学材料のナノインデンテーション試験を行い,押し込み荷重とクラック発生機構,弾塑性的挙動の関係を調査した.押し込み荷重が同一ならば,最大変位量は球圧子よりビッカース圧子のほうが大きく,クラック発生押し込み荷重はビッカース圧子よりも球圧子のほうが大きい値を示した.最後に,研削加工のモンテカルロシミュレーションによって研削機構に及ぼす切れ刃トランケーションの影響を理論的に考察し,砥石表面トポグラフィ,研削条件,トランケーション量が最大砥粒切込み深さ,研削仕上げ面粗さに及ぼす影響を明らかにした.また,硬脆材料と延性材料の平面研削実験を行い,理論解析結果を実験的に検証した.その結果,わずかのトランケーション量であっても研削仕上げ面粗さは飛躍的に向上し,最大砥粒切込み深さは切れ刃トランケーション量の増加にともなって減少し,やがて,ホイール粒度と集中度によって決定される固有値に収束する.石英ガラスのような硬脆材料の場合,研削仕上げ面粗さは切れ刃切削高さの一定化,切れ刃形状の平坦化の他に,最大砥粒切込み深さの減少という相乗効果によって向上する.したがって,延性モード研削を実現するためには,切れ刃トランケーションの他に,砥石切込み量と工作物速度を適正に選定することが重要であることがわかった.
|