2005 Fiscal Year Annual Research Report
生体平衡維持機構の制御論的研究とその高齢者転倒予防等への応用
Project/Area Number |
17560220
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
江 依法 独立行政法人理化学研究所, 生物制御システム研究チーム, 研究員 (40373302)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 英紀 独立行政法人理化学研究所, 生物制御システム研究チーム, チームリーダー (10029514)
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Keywords | 身体動揺 / PID制御 / 視覚 / 平衡機構評価 |
Research Abstract |
ヒト立位時の姿勢維持が可能となったのはヒトの脳の発達により,運動制御機能の進化の結果だと考えられる.しかし,脳は如何に身体をコントロールして平衡維持を可能にしているのか,あるいは如何に視覚等の影響を受けているのかは重要な問題である.本研究ではPID(比例,積分と微分)制御モデルを用いて立位姿勢時の平衡維持を解析し,異なる視覚刺激パターンの条件下で,平衡維持における視覚の影響について検討した.10人の健常な若年者(男性4名,女性6名,平均年齢37.7±7.21歳)に対する立位姿勢時の左右方向の身体動揺を計測した.足関節と腰関節の回転はほぼ同じ振幅,逆フェーズで運動することに基づき,多リンク系の倒立振子モデルを構築した.被験者の体格によりモデルのパラメーターを決め,立位姿勢時のKD, KPとKIを同定することが可能となった.開眼時と比べ,閉眼時のKD値が有意に減少することが判明した(開眼時は131.5±37.6Nms/rad,閉眼時は90.4±26.0Nms/radであった,p<0.001).身体動揺のシミュレーションには,KD値を下げていくと閉眼時の特徴的な身体動揺曲線が得られた.結論として:1)立位姿勢時の身体動揺はPID制御で記述することが可能である.2)視覚によりバランス制御の影響はダンプ係数(KD)の低下で説明することが出来る.3)立位姿勢時の平衡維持における前庭,視覚と固有感覚のフィードバック制御は鉛直方向付近では線形化することが可能だと考えられる.これらの結果から,新たな平衡機能評価の手段を確立することが期待される.
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