2006 Fiscal Year Annual Research Report
生体平衡維持機構の制御論的研究とその高齢者転倒予防等への応用
Project/Area Number |
17560220
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
江 依法 独立行政法人理化学研究所, 生物制御システム研究チーム, 研究員 (40373302)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 英紀 独立行政法人理化学研究所, 生物制御システム研究チーム, チームリーダー (10029514)
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Keywords | 身体動揺 / PID制御 / 視覚 / 平衡機構評価 / 高齢者転倒 |
Research Abstract |
ヒトが安静直立する時の平衡制御をPID制御モデルで記述することが出来た.このモデルの基本的な考えとして,直立姿勢を維持するために筋骨格系から作り出す校正用の力である校正モーメントは身体の偏移角度と比例(比例制御,P制御),偏移角度の変化と比例(微分制御,D制御)および偏移角度の累積と比例(積分制御,I制御)により行われていると仮設した.平衡制御のPID制御モデルとは校正モーメントが比例,微分,積分制御のそれぞれの割合で行い,その重さの係数はそれぞれKp,KdとKiであると定義されている.このPID制御モデルを使用してヒト立位時の身体動揺の様子をシミュレーションにより再現することが可能で,また,身体動揺の周波数特徴も表される.この結果から,ヒトの安静直立時の平衡制御がPID制御モデルによって記述することの優位性を示している.さらに,このモデルを使用して平衡制御の視覚による影響を調べた.結果として,閉眼時のKdの値が有意に下がっていることが判明した.視覚が微分制御器の働きとして,平衡制御における役割が明らかにされた.逆に,糖尿病なとの原因で網膜の病変のある方はKd値が低下していることも判明した. 一方,高齢者の方にこのPID制御モデルを利用して平衡制御能力を計測してみると年齢とともにKdの値が減少していることが明らかにされた.特に,65歳後の被験者にはKd値が急に下がることが判明した.これは加齢とともに,ヒトの平衡維持制御がPID制御からPI制御に変換していることを示している.この現象は高齢者の平衡能力の低下の原因であると考えられ,またはこれは65歳後の転倒発生率の増加の理由になる可能性が十分に高い.これから,転倒発生率とPID制御との関係を調べる必要があると考えられる.
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