Research Abstract |
GPS(Global Positioning System;人工衛星測量システム)を用いた地盤変位計測の高精度化を実現した.研究代表者は,すでに従来cm程度の精度と考えられていたGPSによる変位計測について,独自のデータ処理によってmmの精度を実証し,その手法を組み込んだシステムが実用化されている.本研究では,さらなる高精度化を目指して,気象条件の影響,上空障害物の影響,を取り除く方法を確立した. 気象条件の影響については,土木分野における高低差が大きく基線長が数km程度の比較的狭い範囲における地盤変位計測を対象として,大掛かりな計測の仕組みを必要とせず,地表気象のみから気象条件に基づく電波の大気圏遅延の影響を取り除くことができることを実証した.実証においては,山口県下の地すべり斜面にGPS変位連続計測システムと気象センサーを設置し,2年間途切れることなく連続計測を実施し,本手法を適用して妥当性の検証を行った. 一方,斜面安全監視を目的としてGPSセンサーを設置する場合,周辺の木々や構造物などが電波の障害物となり計測精度劣化する.障害物を通して電波を発射している人工衛星からのデータを除外して処理することで,上空障害物の影響を除去することに成功した.このテーマでは,道路斜面に計測システムを設置し2年間連続計測したデータを用いて実証した. 成果を以下に取りまとめる. (1)地表気象(温度,湿度,気圧)を用いて,Modified Hopfieldモデルを適用することで,GPSによる変位計測結果から気象による年周期誤差を除去できることが実証された.気象データとしては,計測地点の最寄の気象庁測候所のデータを用いればよい.GPSセンサー位置の気象データを用いれば気象による日変化誤差も除去できる. (2)GPSセンサー上空の障害物の影響は,障害物を通して受信する電波を用いないことで排除できることを実証した. なお,研究成果の一部は,「GPSによる地盤変位計測における気象の影響と補正方法の検討」として土木学会論文集に掲載予定であり,他の成果は投稿準備中である.さらに,本研究も含めて一連の研究により,平成18年度山口県科学技術振興奨励賞を受賞した.
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