Research Abstract |
近縁外来種の侵入による在来種の絶滅メカニズムを明らかにするため,タイリクバラタナゴ(Roo:外来種)とニッポンバラタナゴ(Rok:在来種)の混合飼育試験を,人工池と水槽を用いて行った.野外実験は15m×5mの人口池にRok50ペア,Roo5ペア,産卵母貝であるイシガイ30個体を,水槽実験はRok8ペア,Roo4ペア,イシガイ5個体をそれぞれ加えて行った.最初に,水中カメラによる繁殖行動の観察を行い,亜種間での交配頻度を調べた.次に貝から浮出した仔魚について,池・水槽共に定期的なサンプリングを行い,ミトコンドリアDNAの分析による母系判定とマイクロサテライトマーカー6遺伝子座の分析による交雑個体の判定を行った. 配偶行動において亜種間での生殖的隔離は殆ど認められなかったが,Rooの雄はRokの雄と比べ繁殖行動において優位である傾向が認められた.雌の繁殖率について見ると,RooはRokの約6倍であることが判った.配偶行動の頻度は,Rok×Rok, Roo×Roo,亜種間の順に高かった.しかしながら,遺伝子鑑定における仔魚の個体数は,雑種,Roo, Rokの順に多く,配偶行動の頻度とは逆の結果となった.なお,ミトコンドリアDNAについて見ると,仔魚の約8割がRooであった. 今回の実験から,RooによるRokの駆逐においては,Rooの繁殖率と雑種の生存率の高さに加え,Rokの母貝内における初期生存率の低さが主な要因であり,配偶行動における亜種間交配頻度の高さが必ずしも駆逐の主要因では無いことが示唆された.次年度は,配偶行動におけるRooとRokの雄の適応価の違いを定量化すると共に,野外人工池における遺伝子頻度の変化のモニタリングを継続することにより,遺伝子レベルでの外来種による在来種の駆逐の可能性を検証する.また,野外実験から得られたデーターを基に数理モデルを構築し,コンピューターシュミレーションによる在来種の個体群存続可能性分析を行い,外来種との交雑による在来種の駆逐条件を明らかにする.
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