2005 Fiscal Year Annual Research Report
戦後中国北方草原地域における経済・社会の変容と砂漠化問題に関する研究
Project/Area Number |
17580196
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
沈 金虎 京都大学, 農学研究科, 講師 (70258664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加賀爪 優 京都大学, 農学研究科, 教授 (20101248)
小田 滋晃 京都大学, 農学研究科, 教授 (70169308)
浅見 淳之 京都大学, 農学研究科, 助教授 (60184157)
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Keywords | 草原退化 / 砂漠化 / 過放牧 / 草原農業政策 / 生産責任制 / コモンズの悲劇 / 生態環境保護 |
Research Abstract |
本研究は経済改革以降中国草原地域における経済・社会の変容と草原退化、砂漠化との関係、並びに今後取るべき対策について実証的・体系的に研究するものである。初年度の今年はまず既存文献、統計資料等の整理・分析を通じて、(1)草原地域の自然・人文・経済と社会状況、(2)経済改革以降当該地域における政治・経済制度の変遷と地方経済、農牧業の発展、(3)政府の環境保護政策の展開を把握し、また内モンゴルを対象に、農村改革の展開と草原三化の歴史過程、現状とその原因について現地調査を行った。以下のことが明らかにされた。 草原農村の自然・経済と社会状況は他の一般農村地域と大きく異なるが、これまでに中国政府は一般農村地域も草原農村も同じような経済改革を実施してきた。その結果、草原地域での畜牧生産は飛躍的に発展したが、同時に深刻な草原退化問題をもたらした。 草原退化の原因について地球温暖化による気象変化の原因もあろうが、最大の要因はやはり農地開墾、過放牧、その他不適切な開発行為にあり、しかもそれらの開発行為は直接に草原の特徴と環境保全の重要性を無視した草原農業政策と結び付いている。例えば、草原過放牧をもたらした原因は、第1に畜産物価格の自由化と需要増加、第2に徹底しなかった草原の土地利用請負責任制(家畜は個人に配分したが、草原の使用権は個人まで分配しなかった)、第3に政府が草原生態保護投資を怠ってきたことにある。 以上の問題に対処する為、90年代後半から中国政府は請負責任制の強化、草畜の平衡並びに草原輪牧・休牧の推進等の対策を講じ始めたが、予算投入と実施範囲は限られ、また草原農牧業の基本を草原利用請負責任制と個人経営に置き続けている。草原農政の重心が環境保護にシフトし、牧場の輪牧・休牧等に規模の経済性が存する状況下で、増産と効率性追求の現行草原経営請負制は果たしてすべての草原農村に最適な制度なのかは疑問である。
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Research Products
(3 results)