Research Abstract |
本研究では,栽培に有益な昆虫を誘引し害虫を排除するシステム,すなわち光特性を利用した物理的防除システムの構築を目指し,花と昆虫との関係が明らかになっていない,多種多様な花の分光反射特性や模様について情報収集および測定を行った。得られた情報は次のとおりである。 1)模様の形態による分類では,明らかに蜜への位置を示す蜜標を持つ花は全体の約78%,複雑な模様を持つ花は約7%,特徴がない花は約15%となり,全体の約85%の花にUV標識と思われる特徴があった。 2)蜜への道標を示す花は,UV標識として花弁の中央に吸収帯を持つ花が多かったが,中にはポリアンサのように花弁の中央に反射帯があり,UV標識と思われる特徴を示している花もあった。このことから,近距離定位において訪花昆虫は紫外領域の反射帯に導かれる昆虫と,吸収帯に導かれる昆虫に分類できると推測された。 3)野花と栽培品種を比較すると,紫外域に道標が存在する割合は栽培品種で約35%,野花で約55%となり,約20%の開きがあった。これら栽培品種と野花との違いは,品種改良によるものか,進化の過程によるものかわからないが,栽培環境や品種改良などがどう影響しているのか興味深いところである。 4)分光反射率の反射パターンで分類すると,300〜500nmに一度ピークがある花と,一度だけ反射率が急激に上昇する花に大別された。 5)反射率が高い(約80%)黄色粘着板は,オンシツコナジラミなどの害虫と一緒に天敵も誘引する場合があるが,反射率が低い(約60%)黄色粘着板には天敵は誘引されない。このことから同じ波長帯の光を使用しても,反射率の違いにより,虫の視覚感度別に誘引の選別が可能と推測された。 今後は,花の模様に加えて,花,葉,茎,葉柄などが成す植物群の模様をテクスチャ解析によって数値データ化し,昆虫の遠距離定位における誘引メカニズムに有益な情報を収集する。
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