2007 Fiscal Year Annual Research Report
脳血管攣縮に対するプロスタサイクリン合成酵素遺伝子の導入
Project/Area Number |
17591500
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
吉田 貴明 Gunma University, 医学部, 助教 (40375572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斉藤 延人 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (60262002)
高橋 章夫 群馬大学, 医学部, 講師 (60261856)
今井 英明 群馬大学, 医学部, 助教 (70359587)
風間 健 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (30396626)
鈴木 智成 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (50361374)
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Keywords | subarachnoid hemorrhage / cerebral vasospasm / ischemic tension recording / prostacyclin |
Research Abstract |
遅発性脳血管攣縮はくも膜下出血後数日経過してから発生し約10日間持続する病態で遅発性脳虚血を生じ,脳動脈瘤破裂患者の予後を左右する。脳血管攣縮を生じた血管に於いて,内皮の機能が低下しており,血管の拡張性が障害されていることが原因の一つになっている。従って,内皮依存性の弛緩物質は脳血管攣縮の治療薬の候補となる。我々は内皮依存性弛緩物質としてprostacyclin(PGI2)に着目した。我々はadenovirus vectorあるいはcationic liposomeを用いたlipifection methodを用いて髄液を媒体とし攣縮脳血管prostacyclin合成酵素(PGIS)遺伝子を導入することで,この内皮障害を機能的に復元し,病態を征圧することを目的として本研究を開始した。しかし,prostacyclin合成酵素(PGIS)遺伝子の導入を行う前に,まずPGI2製剤であるベラプロストナトリウムの脳血管に於ける血管拡張性について検討を行った。ベラプロストナトリウムは既に市販されている為,脳血管攣縮を改善する作用があれば直接臨床に役立ち,本研究の目的をより直接的に達成することが可能となる。ベラプロストナトリウムはisometric tension recordingに於いて,PGF2αによる血管の収縮を容量依存的に抑制した。しかし,今回の検討から我々は髄液を媒体とし攣縮脳血管にprostacyclin合成酵素(PGIS)遺伝子を導入することは可能であっても,合成されたプロスタサイクリンが脳血管攣縮によって狭小化した脳血管を強力に拡張することは困難であることが予想された。しかしながらベラプロストナトリウムのPGF2αに対する強い拮抗作用が証明され,脳血管攣縮の一つの治療薬剤となりうることが示唆された。以上より,プロスタサイクリンを用いた脳血管攣縮の治療について,部分的には,その有用性が示唆されたものの,今後のさらなる検討が必要であると思われた。
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