2006 Fiscal Year Annual Research Report
母体ストレスが着床現象に及ぼす影響に関する基礎的検討
Project/Area Number |
17591729
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
樋口 壽宏 京都大学, 医学研究科, 講師 (00283614)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福原 健 京都大学, 医学研究科, 助手 (00362533)
高倉 賢二 京都大学, 医学研究科, 助教授 (10221350)
藤井 信吾 京都大学, 医学研究科, 教授 (30135579)
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Keywords | 着床 / ストレス / 不妊症 / マウス |
Research Abstract |
【背景と目的】 ヒトの妊娠における重要なステップである着床成立のためには卵巣内分泌因子が重要であることが以前より提唱されている。しかしながら着床周辺期の卵巣ステロイドホルモン値に何ら異常を認めず、形態学的にも子宮内膜は十分卵巣ステロイドホルモンに反応して脱落膜化しているのにも関わらず妊娠に至らない着床不全症例が存在し臨床的に大きな問題となっている。一方現在の人間社会に於いてストレスが女性生殖機能に大きく関与していることが近年指摘されているが、着床成立の時期に母体へのストレスがどの様な影響を与えているのかは全く知られていない。 そこで本研究では、母体ストレスが着床現象に及ぼす影響を解析することを目的に、マウス着床モデルを用いた検討を行った。 【平成18年度の研究実績】 平成18年度は、平成17年度の検討で明らかになった光刺激に代表される母体ストレスがマウス胚の着床を阻害する結果を検証した。更に、ストレスが卵巣を介して着床に及ぼす影響を除外し、着床の場である子宮内膜・着床胚に対するストレスの直接的な影響の検討が可能な実験系の確立を行った。 従来のマウス着床遅延モデルでは、卵巣摘出という手術ストレスをかけた直後にストレス負荷の有無で着床能の検討を行う必要があり、ストレスの評価系としては不適切であることが明らかになった。そこで卵巣摘出後2〜4週間後の手術ストレスから回復した時期の雌マウスにエストロゲンを単回投与し、その3日後からプロゲステロンを連日投与した後エストラジオールを単回投与し胚移植を行ったところ、性交刺激無しに妊娠が成立することが明らかになった。次にこの卵巣摘出マウスを用いた胚移植モデルにおいて慢性ストレスとして超音波刺激を用いたところストレス群において体重減少を来すことなく着床率が低下することが確認された。 以上の結果より超音波ストレスは体重減少を来すことのない慢性ストレスとして適しており、この条件でマウスの着床現象が阻害される可能性があることが示された。また本研究の過程でマウスにおいても卵巣ステロイドホルモンを補充することにより、性交刺激無しに胚着床が成立することが明らかになり、今後着床局所における種々の因子の解析を行うのに本実験系が有効であることが期待された。現在この卵巣摘出マウス胚移植モデルにおいてストレス群・対照群の子宮内膜における遺伝子発現の変動をマイクロアレイ法により網羅的に解析中であり、今後ストレスによる着床障害の分子機構の解析を試みる予定である。
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Research Products
(6 results)