Research Abstract |
目的:介護施設で生活する高齢者を対象に,排便障害とその要因およびその対処方法の実態から考えられた適切な排便の援助方法を実施し,効果を検証した。 方法:対象は,介護老人保健施設入所者で,下剤を服用し下痢や便失禁がみられる高齢者で,座位保持が可能な者5名とした。いずれの対象者も日常生活全般に援助が必要であった。また,5名ともに重度の認知症を有していた。 実施した看護援助は,排便状態,便意の有無,自発的な腹圧の有無,座位保持能力等のアセスメントに基づき,「食後のトイレ誘導」,「腹圧の促進」,そして「座位保持の安定」を行うこととした。また,便の移送を促進するため.に,「食物繊維の摂取」,「温罨法」,「腹部マッサージ」を実施した。排便障害のアセスメント期間,援助実施期間はそれぞれ4週間とした。 結果:アセスメント期間中,いずれの対象者も便失禁の状態で,オムツを使用していた。頻度は少ないが自発的に便意を訴えトイレに座る機会がある者が2名,全く座っていない者が3名であった。援助を実施した結果,トイレでの排便回数は全員が増加した。1名は,ほとんどトイレでの排便が可能になった。オムツヘの失禁回数が減少した者が,2名であった。排便を目的とする座薬の使用回数が減少した者が,2名であった。便意や排便感覚の表出回数は全員が増加し,座位保持能力は4名に向上が認められた。さらに,自発的な発語がほとんど見られない高齢者に,排便に対する爽快感や満足感を表出する言動が確認できた。 結論:高齢者の排便障害のアセスメントに基づく個別的な援助を実施した結果,排便状態の改善,便意や排便感覚の向上,座位保持能力の向上等の結果を得た。高齢者の排便障害には,特に,便意の確認により排便を意識させ,排便時の座位姿勢を安定させる看護援助が重要である。これらの援助を行うことで,高齢者の能力を引き出すことができ,さらに心理的な効果があることが示唆された。
|