2005 Fiscal Year Annual Research Report
重金属やストレス環境で誘導されるメタロチオネインのガン悪性化機構における役割
Project/Area Number |
17790105
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
瀧口 益史 広島国際大学, 薬学部, 助教授 (90330753)
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Keywords | メタロチオネイン / ストレス / ガン / MMP2 / 重金属 / 悪性化 / メタロチオネイン欠損細胞 / SV40 large T抗原 |
Research Abstract |
MT欠損マウスと野生型マウスの線維芽細胞にSV40 large T抗原を導入し不死化した細胞(前がん細胞モデル)を用い、両細胞間で発現量の異なる遺伝子を検索した。その結果、MT欠損細胞ではマトリックスメタロプロテイナーゼ2(MMP2)遺伝子発現が減少しており、MMP2遺伝子産物である68kDa type IV collagenaseの分泌活性も低下していることを明らかにした。一方、SV40 large T抗原はガン抑制遺伝子p53とRB(retinoblastoma genes)を不活性化することにより細胞周期の停止を解除し、細胞を不死化する。それに伴い様々な細胞内シグナル伝達が影響を受け、その標的遺伝子の発現量が変化する。そこで今回、MTの有無によるMMP2遺伝子発現量の変化がSV40 large T抗原による形質転換に伴う細胞内シグナル伝達異常と関連しているか否かについて、SV40 large T抗原を導入していない初代培養線維芽細胞(正常細胞モデル)を用い検討した。その結果、初代培養細胞の場合、野生型とMT欠損細胞間でMMP2遺伝子発現量に差は見られなかった。また、SV40 large T抗原を導入した細胞において発現量に差の見られた他の遺伝子(Cryac Crystallin αC等)も両初代培養細胞間で差は見られなかった。このことから、MTはbasal MMP2遺伝子発現に対して影響しないものの、SV40 large T抗原の共存下MMP2遺伝子発現を増加させることが明らかとなった。正常細胞ではなく、前がん細胞においてMMP2遺伝子などのがん転移関連遺伝子の発現量がMTにより増加することから、がん悪性化機構においてMTは重要な役割を果たしている可能性が考えられる。
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