2017 Fiscal Year Annual Research Report
Omics reveals nitrogen cycling system with anammox
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17H00793
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
高見 英人 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海底資源研究開発センター, 上席研究員 (70359165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒岩 恵 中央大学, 理工学部, 助教 (00761024)
諏訪 裕一 中央大学, 理工学部, 教授 (90154632)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | anammox / メタゲノム解析 / トランスクリプトーム解析 / 窒素循環 / 同位体解析 / ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
anammox活性や脱窒活性を示す集積培養系には、anammox細菌の他に亜硝酸酸化細菌、脱窒反応の一部を担うと思われる2種類の不完全型脱窒菌が優占種とし存在し、相互補完的な窒素代謝によって生態系を維持していると予測される。新学術領域ゲノム支援によって、anammox菌を含むこれら主要4優先種のゲノム配列が完全に、あるいは部分的に再構築されたので、平成29年度はまずこれらゲノムの詳細なアノテーションを行った。その結果、完全に再構築されたはずのanammox菌のゲノムに矛盾する領域が存在することが明らかとなり、ゲノムの不均一性によるものか、リピート配列によるミスアセンブルの可能性が高いことが示唆された。そこで完成ゲノムの構築に必要な濃縮されたanammox菌DNAの取得を目的とし、集積培養系からメタゲノムDNAを抽出する際に行う細菌群の物理的破砕、酵素的溶菌条件を再検討した。抽出されたDNAの由来細菌の構成比は16S rRNAのPCR産物の増幅量から推定し、anammox菌由来の産物の割合が高い破砕条件を用いて、anammox菌DNAが濃縮されたメタゲノムDNAを調整した。本実験は10月に雇用したポストドクトラル研究員と共に行った。 一方、Chloroflexi門のAnaerolineae科の不完全型脱窒細菌由来と思われる3つのコンティグのうち2コンティグは、同一のゲノム配列に高いホモロジーを示すことから、同一生物由来のゲノムと判断された。一般に52存在するリボソームタンパク質遺伝子のうち2つのコンティグ中には47遺伝子が検出されたことから、全ゲノムの9割程度この2コンティグでカバー出来ていると予想された。 これとは別に、4優占種由来の窒素代謝に寄与する遺伝子の発現パターンを調べるため、anammox活性が定常的に検出される集積培養系から全RNAを抽出し、配列決定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初新学術領域ゲノム支援によって完成したと思われていたanammox菌(Brocadia属細菌)ゲノムに矛盾する領域の存在が判明した。これにより、この矛盾する領域や精度に問題があると思われる領域をカバーするゲノム断片の取得するため、できるだけanammox菌DNAが濃縮されたメタゲノムDNAの抽出法の検討が必要となった。抽出法の検討では、物理的破砕条件や酵素による溶菌条件など一つずつ条件を潰して行かなければならないため、予想よりも時間を要した。これまでに検討した濃縮条件によってanammox菌由来DNAが全体の約60%程度にまで濃縮されたDNAが得られているので、この条件でゲノム解析に必要なメタゲノムDNAを10μg取得し、研究協力者の所属する国立遺伝学研究所で解析する予定。 一方、4優占種由来の窒素代謝に寄与する遺伝子の発現パターンを調べるため、anammox活性が定常的に検出される集積培養系から既に全RNAを抽出し、配列決定を行っているので、ゲノムが完成次第RNA配列をマッピングし、発現解析を行う予定。また、anammox菌はNO2に対する毒性が強いことから、NOを基質としてエネルギー獲得していると考えられるが、実際にNOをanammox菌が利用できるかどうかを調べるため、15Nで標識されたNOガスを用いた予備実験の結果、anammox菌がNOを基質として使う可能性が高いことが示唆された。したがって、anammoxゲノムが完全再構築されないまでも、現在問題視されているゲノムの矛盾点が解決されれば、順調に研究が推進されると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は最適と思われるDNAの濃縮検討を用いてメタゲノムDNAを抽出し、濃縮されたDNAからフォスミドライブラリーを作成後、配列決定を行う。決定された配列情報とこれまで再構築されたゲノム配列情報を合わせて、ゲノム配列上の矛盾点を解決し、anammoxゲノムの完成を目指す。anammox菌ゲノムの矛盾点が解決した時点で、これに加え、既に完成している亜硝酸酸化細菌、 一部未完成ながらほとんどのゲノム情報が得られている2種の脱窒菌のゲノム配列に、集積培養リアクターから抽出したメタトランスクリプトーム配列をマッピングし、窒素循環に関与する遺伝子のRPKM値を算出する。これをもとに、anammox、亜硝酸酸化、脱窒反応のどのプロセスのどの生物種由来の遺伝子が組み合わさることで、窒素循環が成立しているかを検討する。また、本anammoxとこれまでに報告のある未培養anammox細菌との比較ゲノム解析、およびMAPLEシステムを用いたanammox細菌の比較機能解析を行って、anammox細菌の共通性と多様性を調べる。 これに加え、ゲノム、トランスクリプトーム解析によって示唆された窒素循環プロセスの可能性を実証するため、まず、anammox細菌が中間産物であるNOを取り込み分子状窒素まで還元するポテンシャルを有しているかを安定同位体ラベルしたNOを用いたトレーサー実験を行う。さらに、anammox細菌がNO2-を利用せず、NOを基質とすることを検証するために、バイオマスの分散強度を変えた試験を行う。各分散強度における物理的性状とFISHによるanammox細菌および脱窒細菌の空間分布、15NO2-と15NOを基質とした際のanammox活性を対応づけることで、anammox細菌と脱窒細菌が近接する時のみ、15NO2-に由来する29N2生成が認められるかを検証する。
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Research Products
(7 results)