2019 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀日本の長期療養型疾患の歴史―ハンセン病・精神疾患・結核の比較統合的検討
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17H00830
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 晃仁 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (80296730)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣川 和花 専修大学, 文学部, 准教授 (10513096)
中村 江里 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 特別研究員(PD) (20773451)
光平 有希 国際日本文化研究センター, 研究部, 機関研究員 (20778675)
市川 智生 沖縄国際大学, 総合文化学部, 准教授 (30508875)
高林 陽展 立教大学, 文学部, 准教授 (30531298)
橋本 明 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (40208442)
久保田 明子 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (40767589)
愼 蒼健 東京理科大学, 工学部教養, 教授 (50366431)
佐藤 雅浩 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (50708328)
野上 玲子 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (60537942)
後藤 基行 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (70722396)
福田 眞人 名古屋外国語大学, 世界教養学部, 教授 (90208968)
山下 麻衣 同志社大学, 商学部, 准教授 (90387994)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 医学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は前年度に引き続き、A精神医療グループ、Bハンセン病グループ、C結核とその他の疾病に関するグループに分かれて研究を実施した。 A精神医療グループは各分担研究者により、①1952~1972年の琉球政府・沖縄県による精神病者監護・措置入院等に関する公文書の収集と分析、②明治末~大正期の精神疾患や精神病院に関する日本の新聞報道スクラップブック資料の分析、③国府台陸軍病院病床日誌の分析、④戦時精神医療の当事者・家族・医療関係者への聞き取り調査、⑤戦前の日本における音楽療法実践の史料調査・分析、⑥精神医療史に関する国際的な研究動向の精査を行った。また、(1)九州大学精神科所蔵の歴史的診療録の保存措置と一部デジタル化、(2)肥前精神医療センター及び下総精神医療センター所蔵の歴史的診療録・運営記録の保存状況調査、(3)(財)小峰研究所所有の資料群(王子脳病院等)の概要調査をグループ全体の研究活動として行った。その結果、多数の論考や学会発表などの成果を得た。 Bハンセン病グループでは、昨年度に引き続き、国立療養所菊池恵楓園(九州(癩)療養所)の1910~1919年の退所者・死亡者約240名に関する同園所蔵資料を、同園における研究倫理審査委員会の許可の下に分担して分析した。入所者個々の背景やライフヒストリーと、入所から退所・死亡に至るまでの園内での処遇を対比しつつ明らかにした。今後さらに順次時期をさかのぼり分析を進めていく。C結核とその他の疾病に関するグループは、[1]日本に置ける府県別に見た時の結核による死亡の分布、[2]いくつかの府県に関してさらに細かい市町村別の結核の罹患の分布、[3]台湾と朝鮮に関する結核に関する死亡と罹患のデータ、[4]精神病院への長期入院にともなって結核となり死亡していく過程の観察という四つの作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
A精神医療グループでは、各分担研究者により、①先行研究の整理、②個別的な研究テーマにかかわる資料の分析、そして③研究プロジェクト全体にかかわる史資料環境の整備を、計画に沿って順調に進めている。特に、九州大学精神科所蔵の歴史的診療録(1930-1988年)に関しては、同大学に所管されていた1930年前後からの医療記録(診療録)群を、各部局の協力の下で九州大学・大学文書館の書庫に移動し、保存措置を施した点を特記したい。大学病院医局が作成した診療録を公的文書館が大量に受け入れたケースは日本においておそらく初めてと考えられ、診療録の取り扱いに関し今後の医療アーカイブズの構築にとっても記念碑的な一歩である。 Bハンセン病グループでは、研究対象を菊池恵楓園という共通の研究対象にしぼっているため、共同研究としてのまとまりが比較的強い。今年度も、菊池恵楓園における倫理審査の手続きが迅速に行われたことや、菊池恵楓園でのアルバイト雇用によって作業を効率化して進めることができたため、まとまった時期・分量の資料の分析を完了することができた。 C結核とその他の疾病に関するグループでは、各分担研究者により、地理的・空間的な結核の分布、20歳代を中心とする年齢構造が持っている意味、そして精神病院において精神疾患と結核が合併で起きる現象を考察した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画上の大きな変更等はなく、今後も引き続き、3グループに分かれつつ、情報交換や進捗状況の確認等を緊密に行って全体としての研究を遂行する。 A精神医療グループでは、2019年度までの研究成果を活かし、①各分担研究者による実証的な事例研究の展開、②史資料環境のさらなる整備を進めてゆく。特に、九州大学医学部精神科所蔵の歴史的診療録(1930-1988年)に関しては、前項で述べたように、同大文書館で保存措置が施され、一部デジタル化の作業も進めている。今後、本研究グループ・同文書館・同大医学部精神科と共同研究を発展させ、その資料(診療録)の内容の検討を行い、戦後の精神病床の急増期における入院患者の実態を検証し、長期在院化に至る事例における要因を分析する。 Bハンセン病グループでは、研究協力者を研究分担者に変更するなどして研究体制を継続・強化し、倫理審査申請を適切に行いながら、研究対象となる時期を1930年まで拡大し、これまでの蓄積と比較し、全体の総括を行う。さらに、他グループとの比較のための論点を具体的に提示したい。 C結核とその他の疾病に関するグループでは昨年度までの研究成果を活かす。ことに精神病院において進めた結核との合併という現象を、ハンセン病の施設に適用する可能性を論じていく。
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Research Products
(52 results)