2019 Fiscal Year Annual Research Report
Statistics of medical records in Great East Japan Earthquake and system dynamics simulation for efficient disaster medical response.
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17H00840
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
江川 新一 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (00270679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥村 誠 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (00194514)
石井 正 東北大学, 大学病院, 教授 (00650657)
辻 一郎 東北大学, 医学系研究科, 教授 (20171994)
中山 雅晴 東北大学, 医学系研究科, 教授 (40375085)
金谷 泰宏 東海大学, 医学部, 教授 (40506317)
佐々木 宏之 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (90625097)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 災害医療 / 災害診療記録 / 医療ニーズ / システムダイナミクス / モデル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
東北大学医学系研究科倫理委員会の承認(2015-1-690)に基づき、すべての医療機関を津波によって喪失した南三陸町の診療記録の匿名データベース化を完成した。重複などを取り除いた10464件、18532診断による解析を行い論文化した(Suda TJEM 2019)。震災前人口が17429人の町で、外部からの支援者を含む可能性はあるが、震災後2か月で人口の60%にあたる10464人が避難所や自宅での診療を必要としたことで、災害で医療機関を失うことの重大性が明らかとなった。34の疾患分類を治療法や疾患の推移に特徴をもつ5つのモジュールに分けて解析することで、全体の医療ニーズの継時的推移をシステムダイナミクスモデルに当てはめることが可能となった。また、震災前の全国的な患者集計との比較により、感染性疾患が全年齢・性別で増加した一方で、非感染性疾患の受診は抑制されてい る可能性があり、注意深く医療ニーズを探る必要性が明らかとなった。50-80歳の女性で男性の2倍近くの睡眠障害が存在することが明らかとなったため、睡眠障害のリスク分析を行ったところ、NCDを有することの多い高齢女性よりも、NCDを持たないやや若い年代が避難所で睡眠障害の治療を必要としたことが明らかとなった(投稿中)。 気仙沼地区については、倫理承認(2017-1-314)に基づき、同様に災害診療記録約7600件を匿名データベース化した。重複をのぞき有効な疾患情報と日付をもつ5784レコードの解析を進めている。さらに、倫理承認(2018-1-315)に基づき、石巻圏合同救護チームによる約14000件の災害診療記録を匿名データベース化しデータクリーニングを行っている。当初概算よりも診療記録数が多くなることが判明し、予算の前倒し申請を行ってプライバシーマーク企業による匿名化作業を加速した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
南三陸町のデータを論文化した。現在、不眠症に対するさらに詳細な解析を実施し論文はほぼ完成している。気仙沼のデータ解析を開始し、データクリーニングの結果、5784件の有効データに絞り込むことができた。石巻圏合同救護班の災害診療記録の匿名データベース化に着手し、当初予定の14000件に達成したが、さらに数千件の診療記録が存在していたことが判明し、予算の前倒し申請も行って匿名化作業を加速した。ほぼ計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
解析用データベースの構造構築は完了している。南三陸町の約10500件のデータベースの最終的な確定と、テーマごとの解析を継続する。病院や医院が津波により完全に失われた自治体における保健医療ニーズの時間的推移(Suda et al 2019)と同様の研究を気仙沼地域、石巻地域のデータに関しても行う。(江川、佐々木)気仙沼市立病院データの基本入力は終了しており、病名薬剤のデータクリーニング作業を完成させる(江川、石井、中山)。石巻赤十字病院に保管されている診療記録のデータベース化を完成させる。石巻市立病院との合意形成、倫理申請、協定締結を進める。(江川) 匿名化データベースにおいて生年、年齢、性別、診療の日付、症状、診断名、治療(投薬、処置)とその量、投与期間、転帰、入院・紹介の有無をデータ入力する。診断名はICG-10により分類し、治療薬も医薬品データベースに基づき分類する。(江川、金谷) 一次解析は保管施設ごとに行う。東日本大震災の発災から何日目にどのような症状・疾患がどれだけの頻度で発生したかを年齢、性別、避難所などにより層別化して解析する。疾患分類・症状の推移が地域性、避難所ごとに違いがあるかどうかを検討する。治療薬として用いられる薬剤を効能別に分類し、どのような薬がどの時期にどれくらいの量で必要だったかを明らかにする。南三陸町の睡眠障害の解析をモデルとして、さらに外傷や非感染性疾患(NCD)に関するテーマごとの解析を進める(江川、佐々木、石井、中山)。各地区の解析結果の時系列変化をシステムダイナミクスのモジュールとしてあてはめ、モデルの検証を行う。(江川、奥村) 全体の結果を検証するシンポジウムを開催し、医療ニーズシミュレーションモデルの妥当性と、災害医療への実証的応用について検証する。
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Research Products
(31 results)