2020 Fiscal Year Annual Research Report
摂関家伝来史料群の研究資源化と伝統的公家文化の総合的研究
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17H00926
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
尾上 陽介 東京大学, 史料編纂所, 教授 (00242157)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 讓治 京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (40093306)
島谷 弘幸 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 未登録, 館長 (90170935)
佐藤 泰弘 甲南大学, 文学部, 教授 (30289011)
恵美 千鶴子 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 室長 (60566123)
遠藤 珠紀 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (10431800)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本史 / 近衞家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、平安時代以来、千年以上にわたって我が国の政治・文化を形作ってきた摂関家に伝来した膨大な史料群について、目録情報とデジタル画像の整備・公開による研究資源化を進め、伝統的公家文化の総合的研究を行うことを目的としている。 具体的には、摂関家の内で唯一関係史料群がほぼ散逸することなく伝来している近衞家を研究対象とし、公益財団法人陽明文庫等に所蔵される近衞家伝来史料群のうち、古文書・古記録や書蹟・絵画等を中心に、網羅的な原本調査により目録情報を精緻化し、重要史料の高精細デジタル撮影と画像データの東京・京都における公開を進め、従来利用されることの少なかった大規模史料群全体を各方面から分析することにより、伝統的公家文化の諸相について引き続き研究を進めた。また、顕微鏡などを利用した採取した紙質データの分析を通して摂関家が使用した紙の実態を把握し、公家社会における紙の使用法についての考察も継続している。 令和2年度は新型コロナウイルス感染症対策のため、東京から京都市の陽明文庫に出張して原本調査を計画通り進めることが困難となった。そのため、調査は極めて限定的とならざるを得なかったが、経費の一部を令和3年度に繰り越し、時々の感染状況を見極めつつ可能なタイミングを見計らって進めることにより、古文書・古記録・典籍・書蹟などを中心とする近衞家伝来史料の目録情報の精緻化と、重要史料の高精細デジタル撮影を継続して行った。これまでに撮影したデジタルデータについては、東京(東京大学史料編纂所図書閲覧室)・京都(陽明文庫ホームページ)において引き続き公開を進めた。 原本調査と並行して他機関所蔵分も含めた摂関家伝来史料による伝統的公家文化の研究を進め、成果の一部を学術論文や研究集会等で発表した。また、これまで進めてきた虫損など傷みのひどい原本の調査・修補の成果を発表し、研究資源化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は原本調査の機会が限定されたが、陽明文庫一般文書目録の「日記、記録、古文書写」・「仏教」等について原本の網羅的調査を可能な限り継続して目録情報の精緻化に努めた。また、重要な史料・典籍の高精細デジタル撮影を行った。撮影した史料・典籍は、従来本文が知られていなかった『御ゆとのの上の日々記』寛文7年正月記原本1点、『親信卿記』等の近衞家関係古記録新写本19点、伝統的公家文化の根幹となる『源氏物語』4組(重要文化財本・後柏原院他寄合書本・筆者不明寄合書本・近衞信尹他寄合書本)217点、『雑事日記』13点、計250点で、合計コマ数は15,487コマ、これまでの四年間の総計は9,065点、45,823コマである。 撮影した画像データは、科学研究費補助金(基盤研究(S))「天皇家・公家文庫収蔵史料の高度利用化と日本目録学の進展―知の体系の構造伝来の解明―」(研究代表者田島公)による成果と併せて順次公開を進めており、令和2年度には東京大学史料編纂所の日本古文書ユニオンカタログデータベースにより書状類2,260件を史料編纂所図書閲覧室端末から公開した。また、データを提供することにより、陽明文庫ホームページの「陽明文庫デジタルアーカイブ」(http://ymbk.sakura.ne.jp/ymbkda/index.htm)から、ダウンロード可能な形式で、新たに書状類1,945点の史料画像2,650コマが追加され、総計7,718コマとなった。 原本の調査・撮影と並行して、他機関所蔵分も含めた摂関家伝来史料による近衞家歴代当主やその周辺人物の政治的・文化的活動や、伝統的公家文化についての研究を進め、成果の一部を学術論文や市民向けの公開講座等で発表している。修理を終えた原本では、中世の春日社若宮臨時祭に関する新出史料『臨時祭之事』について、講演報告や全文翻刻により内容を公開した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は新型コロナウイルス感染症対策の影響で出張調査が限定されたため、経費の一部を令和3年度にまで繰り越しつつ、陽明文庫における原本調査の対象を、多数の細かい一紙物等から構成される史料群から、ある程度まとまった同質の冊子から構成される史料群を中心とするように改めた。これにより比較的短時間で調査対象史料群の全容を把握して目録情報を再検討することが可能となり、高精細デジタル撮影を行うことができた。 最終年度である令和3年度においても出張調査の機会が限定されることが想定されるため、同様に調査対象を再検討し、状況の許す限り、引き続き陽明文庫所蔵近衞家伝来史料の目録情報の精緻化と高精細デジタル撮影を進めたい。具体的には、延宝3年(1675)から明治5年(1872)まで、近衞家に仕えた家司により約二百年間に亘って記録され、近世における摂関家の活動をよく伝える『雑事日記』を中心に、原本調査とデジタル撮影を行う予定である。全体で324冊にも及ぶため、配分額を勘案して、これまで完全に未撮影で史料として利用されていなかった天保10年(1839)以降の部分から着手し、目録情報の精緻化と高精細デジタル撮影を進める。 また、摂関家伝来史料について原本およびデジタル画像により分析することで、古代から近世に至るまでの近衞家歴代とその周辺人物の政治的・文化的活動を考察し、研究成果を学術論文・研究集会等で発表する。同時に、これまでの紙質調査から得られた知見を反映しつつ、虫損等により破損した史料の修補も継続して進め、研究資源化を図る。 撮影を終えた高精細デジタル画像データについては、引き続き東京大学史料編纂所のデータベースに格納し図書室内の端末から公開することに努める。また、陽明文庫など京都所在の機関にも画像データや目録情報を提供し、そこからの公開も進める。
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Research Products
(23 results)