2019 Fiscal Year Annual Research Report
The critical reconstruction of the "sovereignty" concept in historic Europe
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17H00934
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
古谷 大輔 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (30335400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 はる美 東洋大学, 文学部, 准教授 (00540379)
渋谷 聡 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (30273915)
中本 香 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (30324875)
中澤 達哉 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60350378)
佐々木 真 駒澤大学, 文学部, 教授 (70265966)
小山 哲 京都大学, 文学研究科, 教授 (80215425)
近藤 和彦 立正大学, 人文科学研究所, 研究員 (90011387)
内村 俊太 上智大学, 外国語学部, 准教授 (90710848)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 近世史 / 君主政 / 主権 / 主権国家 / 礫岩国家 / 複合君主政 / 主権国家体制 / 国家形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の3年度目にあたる2019年度は、年度末におけるコロナウィルスの流行と感染防止を目的とした研究計画の見直しから、年度末に予定されていた研究成果公開を目的としたワークショップを2020年度の補助事業として延期するなどの対応を図りながら実施された。2019年度の研究活動の主軸は、初年度と二年度における本研究の研究成果の中間報告を目的に、国内の歴史学界に対してその成果を公開することに置かれた。まず2019年5月26日に開催された2019年度歴史学研究会大会合同シンポジウム「「主権国家」再考Part2―翻訳される主権」の実施に協力し、①近世から近代へ、②ヨーロッパからアジアへという二つの軸に即しながら、近世ヨーロッパで錬成された「主権」概念の翻訳と拡散の過程に注目することで、世界史的な観点から「主権」概念の批判的再構築を図る糸口を見いだした。次に2019年11月16日には早稲田大学において公開研究会「「主権国家再考」の再考」を、さらに本来であれば2020年3月21-22日に島根大学で開催を予定していた公開ワークショップ「歴史的ヨーロッパにおける主権概念の批判的再構築」については、2020年6月21日にオンライン形式に実施方法を変更して開催した。これら二度の公開研究会・ワークショップにおいては、本研究に参画する研究分担者から、近世ヨーロッパにおける複合的な政治編成の存在を前提とした場合、従来の「主権」概念理解をその実態に即して相対化する個々の史料分析とその方法の提示がなされた。これらの研究成果の中間報告とは別に、2019年12月27日-28日には水戸にて研究合宿が開催され、5月に開催されたシンポジウムと11月の公開研究会で得られた国内の研究者からの意見を踏まえた本研究の方向性の再検討が議論され、これを踏まえる形で研究分担者個々の研究を包括する本研究の方針が分担者間で共有された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、歴史的ヨーロッパにおいて政治的・文化的情況を背景に変動を繰り返した君主政の姿に着目し、「王と政治共同体の統治」と称される権力の共有状態を背景としながら、主権概念の批判的再構築を図ろうとするものである。2017年度以降の研究分担者の研究活動から、権力の共有状態を踏まえてあらためて確認される主権概念の実態は、権力に関わった人間集団の多様性に応じて多元的であったことがヨーロッパ各地の事例をもって明らかにされつつあったが、2019年度の複数回にわたるシンポジウム・研究会・ワークショップにおいて披瀝された個々の研究成果から、従来の「主権」概念理解が示していたような「主権者」による統治政策については、近世ヨーロッパの「文芸共和国」的な雰囲気のなかで共通されつつあった理念と、個々の地域が直面する現実との間の乖離が確認されるとともに、近世ヨーロッパを構成した個々の地域が直面した秩序問題の内実に応じて、利害関係者との多様な交渉を通じた対応の事実が明らかにされたつつある。2019年度までの研究活動で明らかにされつつあるこれらの成果は、人口に膾炙している近代主義的な主権理解を鋭く批判する視座に結びつくものであるとともに、本研究は日本史・東洋史の研究者とともに、近世ヨーロッパで錬成された「主権」概念の翻訳と拡散の過程をも視野に入れながら、その特異性を意識しつつ、世界史的な観点から統治実践と権力者との関係について比較研究を図る枠組みも築かれつつある。こうした本研究の方向性を国内の歴史学界に提起しながら、そこで得られた議論をフィードバックすることで本研究に参画する研究分担者の間で最終年度にむけた研究方針を共有することができた2019年度については、これらの成果に鑑みて進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、2017年-2019年度の研究成果を踏まえつつも、ならびにコロナウィルスの感染防止を目的とした研究環境の変化を念頭に、今後は以下の方針に従って推進される。本研究に参画する研究者は、2017-19年度と継続的に議論されてきた比較研究を成立させる「補助線」と2019年度の研究活動でに明白に確認された本研究の方向性を共有しながら、各自が分担する地域を対象に主権概念の再検討作業について完成させる。その際、コロナウィルスの世界的な流行について終息が見えない状況にあるため、特定の研究会合についてはZoomのようなビデオ会議サービス、日頃の研究活動についてはSlackのような共同作業構築サービスを活用して、オンライン方式による研究討議を積極的に重ね、最終的な研究成果の整理にそれらの手段を活かすように専心する。(従来のように国内外への研究を目的とした移動が困難になるため、当初計画で計上予定していた旅費については、十全なオンライン討議を実現できる機材環境の整備へと使途を変更する。)これらオンライン上で実現されるSaaSを活用し、報告とそこで得られた議論をフィードバックさせながら、研究分担者は「歴史的ヨーロッパにおける主権概念の批判的再構築」に結びつく個々の研究を最終的に整理する。また2018年度以来、その開催に協力してきた歴史学研究会大会合同部会シンポジウム「主権国家「再考」」に引き続き本研究で得られた知見を提供しながら協力するとともに、本研究の最終的な成果公開の場として国内外の研究者を招いたシンポジウムを別途開催して、国内外の学界に主権概念の批判的再構築の議論を喚起していく。(ただし国際シンポジウムについては、コロナウィルスの状況に応じて、その開催方法などの変更もありうる。)
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Research Products
(35 results)
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[Book] 図説法国史2019
Author(s)
佐佐木真
Total Pages
407
Publisher
天津人民出版社
ISBN
9787201156026