2018 Fiscal Year Annual Research Report
更新世-完新世移行期における人類の生態行動系と縄文文化の形成に関する先史学的研究
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17H00939
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
谷口 康浩 國學院大學, 文学部, 教授 (00197526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
百原 新 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (00250150)
植田 信太郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 名誉教授 (20143357)
二宮 修治 東京学芸大学, 教育学部, 名誉教授 (30107718)
工藤 雄一郎 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (30456636)
近藤 修 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (40244347)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 縄文人 / 縄文時代早期 / 縄文文化 / 古代DNA分析 / 骨考古学 / 動物考古学 / 植物考古学 / 生態行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
① 居家以岩陰遺跡の発掘調査 平成30年9月に群馬県吾妻郡長野原町居家以岩陰遺跡の発掘調査を19日間の日程で実施し、縄文時代早期後葉の埋葬人骨群の発掘調査を進めた。その結果、確認された個体数は約20体に増加し、15個体を取り上げた。また、岩陰前面に堆積する早期中葉の灰層の発掘調査に着手し、押型文土器を伴う約1万年前の生活廃棄物を多量に収集した。調査期間中に研究分担者・研究協力者による現地合同調査を実施し、分析試料のサンプリングと現地での検討をおこなった。 ② 出土資料の分析 居家以岩陰遺跡出土の考古遺物・人骨資料・動物骨・植物遺体・石材・土器付着物等の各種分析を進めた。縄文早期人骨の形態・年代測定・同位体分析・DNA分析で大きな研究成果を得た。動物骨の研究、植物種子の研究などでも注目すべき成果を得た。また、研究報告書作成に向け出土資料の図化作業を進め、経費節約のため人骨出土状況および土器・石器実測図化の一部を外部の専門業者に委託した。 ③ 上信越地域の古環境調査 地域の環境史復元を目的として、新潟県小松原湿原および長野県野々海湿原でのボーリング調査を実施し、大型植物遺体・花粉化石・テフラの分析をおこなった。 ④ 関連調査 縄文早期の人骨出土例を全国的に集成し、人骨形態や埋葬法の比較研究を進めた。愛媛県上黒岩岩陰遺跡ならびに広島県帝釈峡馬渡岩陰・観音堂岩陰を現地踏査し、人骨出土状況と出土遺物を調査した。 ⑤ 研究会および研究成果の公表 平成30年9月と平成31年2月に研究会を開催した。また、平成30年10・11月に國學院大學博物館で研究成果の速報展を開催した。縄文早期の1号人骨に関する研究成果を論文発表したほか、日本人類学会・動物考古学会・国史学会にて研究発表をおこない、研究成果の一部を公開した。研究成果を公開するホームページの開設準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
① 縄文早期人骨の研究 出土した縄文早期の人骨はきわめて保存状態がよく、全身骨格がほぼ揃った個体も含まれる。骨の形態分析、DNA分析、人骨抽出コラーゲンの同位体分析は順調に進んでおり、論文発表・学会発表を進めている。1号・4号・8号人骨についてはミトコンドリアDNAの全塩基配列を解明しハプロタイプの違いや母系血縁のないことを確認したほか、形態や食性を詳しく調べることができた。また骨の出土状態の精密測量により埋葬法も明らかにできた。平成30年度までに確認した個体は約20個体に上る。縄文早期の完全な埋葬人骨は全国的にも少なく、居家以人骨群は人類学的にも考古学的にも最重要の人骨資料となるものである。 ② 植物・動物考古学的研究 縄文早期中葉の押型文土器期の生活廃棄物を包含する厚さ1m以上の灰層の発掘に着手し、土壌水洗選別で回収した動物骨・植物遺体の同定・分析を通じて早期縄文人の生態的行動と資源利用の詳しい復元を進めている。早期におけるイヌビエの利用などの新事実も明らかとなった。このように高い精度で計画的に収集された縄文早期の生活廃棄物資料は全国的にもほとんど例がなく、縄文文化形成期の生活実態を復元できる貴重なデータとなる。 ③ 考古学的研究 縄文時代早期の土器群・石器群が豊富に出土し、特に早期中葉の沈線文土器・押型文土器の出土量が多く、かつ新発見の型式群が含まれる。居家以岩陰遺跡出土資料を中心に、これまで未解明部分の多かった上信越地域の早期縄文土器の型式編年を構築できる。さらに黒曜石や土器胎土鉱物の産地同定等を進めることで、早期縄文人の行動を具体的に明かにできる。それにより縄文文化の形成過程における人類の生態的行動の究明という本研究の目的に接近することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
① 居家以岩陰遺跡の発掘調査 居家以岩陰遺跡の発掘調査を継続して推進し、埋葬人骨、土器・石器等の考古遺物、動物骨・植物種子等の食料残滓を計画的に収集・蓄積して、縄文文化形成期の人間の生態的行動の解明を目指す。平成29年度に調査したのは、主に縄文時代早期後葉の埋葬人骨群と早期中葉の生活廃棄物層(灰層)であるが、今後さらに下層の発掘を進め、早期前葉から草創期の資料群の収集を進めていく予定である。 ② 縄文早期人骨の研究 縄文早期の埋葬人骨についてはとくに重要な研究成果が上がっており、DNAの分析技術も確立できた。C14年代測定、骨の形態分析、古病理学的分析、DNA分析、人骨抽出コラーゲンの同位体分析を、さらに多くの個体について順次進めていく方針である。 ③ 地域環境史の調査研究 縄文文化の形成過程と環境史との関係から考えるために、更新世末から完新世にかけての地域の環境史や植生史を復元する目的で、上信越地域の湿原でのボーリング調査を継続する。花粉分析・テフラ分析の専門家も加え研究組織も強化する。 ④ 研究成果の公表 研究成果を順次、論文発表していく。また日本考古学協会・日本人類学会等でのセッションに応募し、本研究プロジェクトの成果を公開していく。また、本研究プロジェクトの概要と研究成果を公開するWebページの開設を準備しており、平成30年度中の公開を目指す。さらに國學院大學博物館で速報展を開催し、研究成果のエッセンスを広く公開する。発掘調査期間中には現地説明会を開催する。 ⑤ 研究成果の発信と普及 最終年度には4か年の研究成果を総合する公開シンポジウムを開催する。研究期間終了後にはその内容を集束し書籍化する予定である。先端的な研究成果を広く発信するために、専門的な論文集ではなく、一般の方々にも理解できるように平易に解説するものにして研究成果を社会に普及・還元したい。
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Research Products
(29 results)
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[Journal Article] The impact of environmental change on the use of early pottery by East Asian hunter-gatherers2018
Author(s)
Alexandre Lucquin, Harry K. Robson, Yvette Eley, Shinya Shoda, Dessislava Veltcheva, Kevin Gibbs, Carl P. Heron, Sven Isaksson, Yastami Nishida, Yashuhiro Taniguchi, Shota Nakajima, Kenichi Kobayashi, Peter Jordan, Simon Kaner and Oliver E. Craig
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Journal Title
Proceedings of the National Academy of Science
Volume: 115(31)
Pages: 7931-7936
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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