2018 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア「知のプラットフォーム」の現状に関する研究
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17H00975
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
平野 健一郎 早稲田大学, 政治経済学術院, 名誉教授 (40012463)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鄭 成 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授(任期付) (20386668)
杉村 美紀 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (60365674)
加藤 恵美 早稲田大学, 政治経済学術院, 次席研究員(研究院講師) (60434213)
白石 さや 岡崎女子大学, 子ども教育学部, 教授 (70288679)
劉 傑 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (80288018)
金 香男 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 教授 (80410059)
森川 裕二 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (90440221)
黄 斌 早稲田大学, 地域・地域間研究機構, 次席研究員(研究院講師) (50755775)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 東アジア / トランスナショナル / 知的交流 / 留学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
「知のプラットフォーム」は、知識人を引き寄せる磁場である。その磁場では、ある理念が磁力として働き、そこに引き寄せられ出会った知識人は、対話を通じて共に新しい知識を生み出す。本研究は、なかでも(1)国境を越え、(2)学問領域を越え、(3)研究者と実務者(実践者)の境界を越えて創造される、よりよい東アジアのための「超域知」を生み出すプラットフォームを理念型として、戦後東アジアという固有の文脈を背景とした「知のプラットフォーム」の現状を、実証的に捉えることを目的としている。 H30年度(2年目)の研究実績は、主要には次の2つである。 第一に、1年目の研究を通じて、研究メンバーの間で一定程度の共通理解に到達していた「知のプラットフォーム」の定義を、さらに上述のように精緻化することに成功した。その結果として、研究メンバーひとりひとりの問題意識はいっそう研ぎ澄まされ、3年目の研究計画、なかでも研究のアプローチをより具体的に構想するに至っている。 第二に、中国・台湾・韓国(東アジア)出身で元留日学生である知識人(大学で教育・研究に携わる者)へのインタビューを、順調に積み重ねることができた。これらのインタビューを通じて、「知のプラットフォーム」形成の予備段階については多くの実例を収集することができた。このようにして2年目には、全ての研究メンバーが、3年目以降に本格的な研究成果としての論文を執筆するための足場を、確かに固めることができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H30年度(2年目)には、先に述べたように、東アジア出身の元留日学生たる知識人(大学での教育・研究者)に対するインタビュー調査を重ねた。1年目には台湾の知識人に対するインタビューが中心であったが、本年度は中国を中心に、また韓国の知識人に対するインタビューも行った。その結果として、インタビュー件数は、台湾8件、中国5件、韓国1件となった。なお、当初予定していたアンケート調査(定量調査)は、予算上の制約に鑑み、またインタビューという質的調査を重ねることで本研究の目的は達成できるという見通しが立ったことから、行わないこととした。 インタビューとは別に、研究会もおおむね計画通りに実施した。そのうち最も重要な研究会は、2年度目末の2月に行った研究合宿であった。その研究会は、研究を実質的に進展させることを目的に、当初予定していた公開ワークショップに代えて行ったものである。合宿では、ほぼ全ての分担者が参加の上、2名の外部講師も招き、2日間にわたり「知のプラットフォーム」の定義と今後の分担研究計画をインテンシブに議論した。 その他、国際文化学会での「日本への留学生と彼らのその後:中国・韓国・台湾の比較の観点から」と題した報告(報告内容は、『ワセダ・アジアレビュー』に掲載)、ならびに渥美国際財団が主催する「第4回アジア未来会議」への参加も計画通り行い、本研究の成果を発信した。また、こうした機会を通じて、より広い範囲の研究者から貴重なフィードバックを得ることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
先に述べたように、2年目の研究の主要な実績は、分担研究の計画をより洗練させることができた点にある。より具体的に述べると、分担者は大きく分けて次の2つのアプローチで「知のプラットフォーム」の現状に迫ることになった。第一に、中国、台湾、韓国それぞれを拠点とする国境を越える知のプ ラットフォームの現状を、その中心人物たる元留日学生に焦点を合わせて分析する。そして第二に、元留日学生がかかわる超域知のプラットフォームの萌芽的事例を、東アジアの知識人が共通に関心を寄せるいくつかのイシュー(歴史問題、国際教育、ポピュラー・カルチャー、移民問題)ごとに、より詳しく検討する。 今後本研究は、研究成果の取りまとめ並びに発信に重点を置き、推進していくこととする。3年目の研究会は、形成の予備段階にある「知のプラットフォーム」にとどまらず、実際に形成された、あるいは形成が試みられた「知のプラットフォーム」の実例を分析した結果についての分担者の研究報告を中心とする。その一方で、「知のプラットフォーム」の現状をより的確に捉えるための別の(追加的な)アプローチがあり得るのか、という観点からも、常に研究の全体像を見直し、柔軟に修正していきたい。そうして、4年目に当初の計画通りに論文集を出版することを目指す。
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Research Products
(35 results)