2020 Fiscal Year Annual Research Report
多様性の経済学:帰納論的ゲーム理論の構築とその応用
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17H00978
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松井 彰彦 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (30272165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星加 良司 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (40418645)
前川 直哉 福島大学, 教育推進機構, 特任准教授 (20739156)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゲーム理論 / 多様性 / フラットダイバーシティ / 障害 / 難病 |
Outline of Annual Research Achievements |
前身の研究で行ったパネル調査において、身体障害者の賃金プロファイルがフラットとなっていることがわかった。これに基づき、2009年度実施の調査(READ調査)にパネル調査(REASE調査)のサンプルを加えてパネル構造にし、先天性障害者と中途障害者の賃金プロファイルを推計して比較することで、障害者に対する統計的差別の有無を検証する研究を遂行している。 READーREASE調査の一時的基礎分析において、障害者が就労する時に困っていることを質問したところ、身体障害者・ろう者、知的障害者において「労働時間の調整」に配慮が必要だがなされていないことが明らかになった。そのため、社会生活基礎調査の比較可能な年次を使用して、障害者の就業における「時間制約」と貧困との関係を女性のそれと比較することで、障害者の就労に対する合理的配慮に「労働時間」が必要となるか否かを検証する研究を遂行している。 東北地方の性的マイノリティ団体に関する調査を継続し、2021年2月に『東北地方の性的マイノリティ団体活動調査報告書』(360頁、杉浦郁子・前川直哉編)を刊行した。東北地方の性的マイノリティ団体に関する本格的な学術調査報告書としては初めてのものであり、地域性や他地域との比較、東日本大震災の影響等を分析・考察する上で基盤となる質的調査として高い重要性を有する。 障害を理由とする差別の解消の促進に関する法律(障害者差別解消法)及び障害者の雇用の促進等に関する法律(改正障害者雇用促進法)が施行されたことを受け,2010年度に行った調査に続き,第3回の「聴覚障害をもつ医療従事者の会2020年(第3回)就労実態調査・研究」を行った。従来の結果との比較検討,さらに2010年代に施行された各関係法規の効果や社会変容の程度の測定,経済状況等を含め,現時点における就労の実態と課題を明らかにしつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID19の影響で海外の共同研究者との研究が一時的にストップしたこともあり、帰納論の研究が遅れている。 また、患者会との接触等をベースにした調査研究も当初の予定通り進まず、こちらも進展が予定と比べると緩やかなものとなっている。 一方、すでに調査したものの解析は順調に進んでおり、報告書ができあがった研究もある。
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Strategy for Future Research Activity |
Covid19に伴う諸々の制約の中、対面でのインタビュー等は当面控え、これまでのデータ・資料を元に研究を行う。 本研究では、対象別に①障害班、②難病班、③性的マイノリティ班の3つの班を構築する。また、班横断型の理論チームを作る。 ① 障害班は前身の研究で行ったパネル調査の分析を進める。(担当者を下記に*で表示)また、28年度施行の障害者差別解消法の分析を進める。(研究分担者:星加良司、研究協力者:臼井久実子、加納和子、川島聡、久野研二、熊谷晋一郎、栗原房江、瀬山紀子、田中恵美子、長瀬修、西倉実季、丹羽菜生、福島智、森壮也*、両角良子*、山下麻衣、長江亮*(特任研究員として雇用)) ② 難病班では、306の指定難病へと拡大された疾患群および難病指定に至らない希少性疾患患者が直面する「制度の隙間」問題の分析を進める。(研究協力者:大野更紗(渡部沙織)、児玉有子) ③ 性的マイノリティ班は機能的には問題がないものの社会的な問題に直面する少数派の問題の分析を継続する。具体的には、福島県やその他地域における質的調査をもととした分析を行う。(研究分担者:前川直哉、研究協力者:飯野由里子) ④ 班横断的作業も行う。具体的には、i) フラット・ダイバーシティ・モデルの特性・限界に関する論点整理、ii)マッチング・モデルの深化発展、iii)帰納論的ゲーム理論の研究を行うため、研究を継続する。(研究協力者:In-Koo Cho、村上愛)
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Remarks |
杉浦郁子・前川直哉編『東北地方の性的マイノリティ団体活動調査報告書』2021年発行、森壮也 横浜視聴覚障害者協会オンライン講義「SDGsとろう者」(2021年)、西倉実季「ルッキズム(外見差別)を考える―見た目で判断することはなぜ差別の問題なのか」、国立市公民館人権講座(2021年)、星加良司「ダイバーシティの時代の観光業」東京都アクセシブルツーリズムセミナー(2020年)
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Research Products
(49 results)