2018 Fiscal Year Annual Research Report
住宅市場における世代間・地域間ミスマッチの解明:パネルデータによる経済分析
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17H00988
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
瀬古 美喜 武蔵野大学, 経済学部, 教授 (60120490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒田 達朗 椙山女学園大学, 現代マネジメント学部, 教授 (00183319)
小川 光 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (10313967)
岩田 真一郎 富山大学, 経済学部, 教授 (10334707)
隅田 和人 東洋大学, 経済学部, 准教授 (10350745)
石野 卓也 金沢星稜大学, 経済学部, 准教授 (10614034)
直井 道生 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 准教授 (70365477)
行武 憲史 日本大学, 経済学部, 准教授 (80804690)
奥村 綱雄 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (90323922)
新倉 博明 武蔵野大学, 経済学部, 講師 (00823395)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | パネルデータ / 住宅市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国の住宅市場においては、住宅ストックと居住ニーズの、世代間・地域間のミスマッチが大きな問題となっている。こうした住宅市場におけるミスマッチが、家計の合理的な選択の結果なのか、制度的な要因に起因するのかを見極めることは、人口減少下における住宅ストックの有効活用という現状の政策的課題に対して、きわめて大きな示唆を与えるものである。本研究課題における第一の目的は、このような住宅市場におけるミスマッチの問題に対する理論面での統一的な分析枠組みを提示することにある。そのためには、長期にわたって同一家計を追跡した質の高いデータを整備して、家計の長期的な意思決定を実証面から検討する必要がある。このようなパネル調査の設計・実施・データ整備が、本研究課題の第二の目的である。 上記の問題意識に基づき、研究期間の第2年度である平成30年度には、パネル調査の設計および実施にかかわる本格的な作業を行なった。具体的には、家計の動学的住宅需要の統一的な分析枠組みを提示し、ライフサイクルを通じた家計の長期的な住宅需要を把握するための初年度に実施した第一世代住宅モジュール調査の再検討およびそれに基づく再設計を実施した。 また、初年度に実施した第一世代住宅モジュール調査の調査結果などを活用した分析を行なった。具体的には、家計の転居・改修行動の実証分析、住宅資産の世代間移転、震災リスクが不動産市場に与える影響、相続が不動産市場に及ぼす影響、住宅家賃の動学的な調整過程の分析などを行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に実施した第一世代住宅モジュール調査を検討し、それに基づいて、第2年度の第一世代住宅モジュール調査の設計、実施にかかわる準備作業を進め、実施した。具体的には、隔年に実施する調査項目と、毎年継続的に実施すべき質問項目の切り分けなどを行なった。住宅改修行動(建て替え、増改築、修繕などのリフォーム)の前年度に関する質問項目、住宅資産の世代間移転の分析に不可欠な質問項目などに関する質問項目を初年度に引き続き、モジュール調査として設計し、「日本家計パネル調査」(Japan Household Panel Survey, JHPS)のサンプルを対象として、2019年1月に実施した。 研究期間の第2年度である平成30年度には、2019年3月21-24日に、Western Economic Association International 15th International Conference が、慶應義塾大学三田キャンパスで、ノーベル経済学賞の受賞者等を招待して盛大に開催されたが、22日に、そこで、2セッションを組織して、各メンバーが、発表者ないしは討論者として登壇し、「住宅市場における世代間・地域間ミスマッチの解明」をめぐる4本の論文の発表と、7本の論文の討論を、英語で行なった。海外の参加者などからの活発な質問もあり、それに対する質疑応答も行なった。2セッション名は、Issues in Population Aging and Housing Market と、Issues in House Price Movementsである。初年度に実施した第1世代住宅モジュール調査は、2018年9月末頃から利用可能となったが、それを活用した論文の発表も含まれる。 上記のとおり、パネル調査の設計および実施、個別の研究トピックの分析とも、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本プロジェクトは、これまで、おおむね順調に進展しており、今後も、当初の研究計画・方法に沿った形で、進めていく予定である。平成31年度は、平成29年度に実施した準備作業と、平成30年度に実施した作業を受けて、さらなる調査実施とデータ整備を行っていく。隔年に実施する質問項目の精査も行なう。また、これらの調査結果を利用し、各研究トピックについてもさらなる分析を進める。具体的には以下の3点を実施する。 まず、パネル調査の実施およびデータ整備に関しては、 第一世代住宅モジュール調査については、平成29年度と平成30年度に実施した調査結果を精査し、データ整備を進める。 次に、個別の研究トピックの分析に関しては、上記のデータ整備作業と並行して、さらなる本格的な分析を実施する。 さらに、年度末にワークショップを開催し、第一世代住宅モジュール調査や、第二世代子ども調査に基づいた研究結果などを報告するワークショップを予定している。 平成32年度以降は、それまでに実施した準備作業を受けて、より詳細な調査実施やデータ整備を行なっていくとともに、各研究トピックについても、更なる分析を進める。特に(a) 家計の転居・住宅改修行動の実証分析、および(b) 住宅資産の世代間移転に関しては、平成30年度の第二世代住宅調査の結果が利用可能になった段階で、本格的な分析作業を開始する。研究成果は、国内外の学会などで積極的な報告を行ない、査読付き学術雑誌への掲載を目指す。 また、「日本家計パネル調査」(Japan Household Panel Survey, JHPS)のデータを読み込む際の、汎用性の高いプログラムの開発にも着手しており、将来的には、一般公開を行ないたいと考えている。
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