2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of high precise amplitude and phase calibrator of gravitational waves
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17H01135
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
都丸 隆行 国立天文台, 重力波プロジェクト, 教授 (80391712)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 敏一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, ダイヤモンドフェロー (20162977)
森脇 喜紀 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (90270470)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 重力波 / キャリブレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は新型コロナウィルスの世界的蔓延により第3期国際共同観測(O3)が途中で中止となってしまったため、日本のKAGRAが目標としていたO3への参加は実現できなかった。しかし、そのような状況においても2020年4月には運転を中断しなかったドイツのGEO600との国際共同観測(O3GK)を実施し、本研究で開発した光輻射圧式重力波信号キャリブレータ(PCAL)の運用と重力波信号較正に寄与することが出来た。この時のキャリブレーション精度は約10%であった。これは解析パイプラインや干渉計システムの不安定さなど全てを含む値であるが、PCAL自身にもまだ大きな不定性がある。また、開発した2台のPCALのうち、Yendに設置した1台は故障してしまい、O3GKでは使用出来なかった。 年度前半はデータ整理などの作業を行い、新型コロナの影響が少なくなった9月以降はPCALのノイズハンティングを行った。この結果、PCALの入射光学系内での散乱光の影響や、強度変調制御回路OFSでノイズが大きい事が分かり、これらの改修設計を始めた。またO3GK時の経験から、真空内のステアリング光学系(ペリスコープ)を用いたアラインメントがなかなか難しい事が分かり、この改良設計を始めた。これらのハードウェア改修は、国立天文台の研究代表者とKEKの分担者で協力して実施した。 また、富山大においては基準積分球とPCALで用いている積分球の定期的な比較較正を行い、PCALレーザーの絶対値を確定させた。現状においては、積算誤差に占めるレーザーパワー絶対値精度の寄与は大きくなく、このまま定期的な校正を実施していく予定である。 このように、新型コロナのために研究が中断された期間はあったが、研究は概ね順調に進捗している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は新型コロナウィルスの世界的蔓延により実質的な活動休止期間を強いられるなど難しい年であったが、2020年4月に行われたドイツGEO600とのO3GK共同観測において初めて、本研究で開発したPCALシステムを用いた信号較正が実施された。これは本研究の目的の一角を占めるものであり、大きな進捗と言える。しかし、現時点においては最終的な較正精度はまだ10%程度であり、PCAL自身に起因するノイズも影響が懸念されているなど、改良を必要とすることも明らかとなった。 KAGRAサイトにおける本格的な活動再開となった9月以降、Xendで運用を行ったPCALのノイズ調査を行い、Transmitter moduleの散乱光や、強度変調制御OFSのノイズなど様々な問題が明らかとなり、これらの改良に着手した。また、Transmitter Moduleから発射したレーザーを鏡上の所定位置に照射し、反射光を積分球型光兼検出器(Receiver Module)で受光するためのステアリング光学系(ペリスコープ)が真空タンク内に設置されているにもかかわらず外部から駆動することが出来ない状態であるためにビームアラインメントが極めて難しいという問題が分かっており、これを改良するためピコモーターの導入やペリスコープマウントの改良にも着手した。さらに、O3GK時には故障していて使用出来なかったYendのPCALについても修理を開始した。このように次期観測O4へ向けて着実に進捗している。 最後に、分担者である富山大では、一次基準となる積分球とReceiver Module内の積分球の定期的な比較校正を実施し、PCALの較正精度を保証するのに大きな貢献をした。 このような事から、研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は本研究の最終年度であり、本研究開発やO3GK時のPCAL運用を中心に、成果をまとめる予定である。残念ながら新型コロナウィルスの影響で次期国際共同観測O4が2022年中盤以降へ延期となってしまい、本研究期間終了までにPCALを用いたO4での重力波信号較正へは寄与出来そうもない。しかし、O4観測で確実にO3GKよりも高精度の、数%精度での較正を実現できるよう準備を進める。具体的には、PCALのノイズ低減、Yend PCALの修理、積分球型光検出器の定期的較正と経年変化の特定を引き続き実施する。また、O4でどの周波数にPCALによる較正信号を入れるべきか?については、O3GK時の経験を元にデータ解析グループと検討を行い、較正信号注入の最適化を行う。 2021年度後半にはKAGRAのコミッショニングやエンジニアリングランが計画されており、これらでは改良したPCALシステムを用いた較正もテストする予定である。 以上のように、新型コロナウィルスの影響下ではあるが、当初計画の目標を達成し、本研究を完了させる予定である。
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Research Products
(21 results)