2019 Fiscal Year Annual Research Report
地球惑星超高層大気の中性粒子分布・力学機構の実証解明を実現する直接観測の基盤構築
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17H01164
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
齋藤 義文 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (30260011)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠原 慧 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (00550500)
横田 勝一郎 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (40435798)
平原 聖文 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (50242102)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 質量分析器 / 人工飛翔体 / 中性粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は将来の地球の電離圏・磁気圏観測や他天体の周回観測及び他天体への着陸探査を含めた惑星探査に向けた、4種類の人工飛翔体搭載用中性粒子質量分析器を開発することである。「マルチターンTOF型質量分析器」についてはTOF型質量分析計に共通で必要となるパルス高圧電源基板と高速データ読出し(ギガサンプル)及び処理回路基板の性能評価を行い、目標とした1~2kV、50ナノ秒立ち上がりや高速(GHz)での波形サンプリングを確認した。「多反射リフレクトロン型質量分析器」については、2018年度に試作した試験モデルの試験を行った結果、最適化の設計が不十分であったことが判明したため、改良のための部品の設計・試作を行った。その上で再度試験を行った結果、予定していた性能を達成できることが確認できた。この他、4つの質量分析器に共通の開発項目である中性粒子の電離機構部の試作品を試験モデルに接続して試験を行い、電離機構部が正常に動作することを確認することができた。当初の「四重極型質量分析器」に変えて開発を進めることにした「オービトラップ型質量分析器」については、イオンをフーリエ変換部に投入する前段で多数(>1,000個)のイオンを時間収束させる収束機構を設計・製作し、その性能を実験室で確認することに成功した。「2次元速度計測用ベネット型中性粒子分析器」については、開発中の中性粒子分析器による質量弁別・速度計測のためには、較正実験設備にて試作中の分析器に対して照射される粒子の質量ならびに飛翔エネルギー・角度を正確に評価する必要があるため、試作器の再設計による電極構造追加の検討に加え、粒子ビームラインの断面プロファイルを計測するための2次元位置検出器の整備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請時の計画では、複数の質量分析器に共通の開発項目である中性粒子の電離機構部、宇宙機搭載用パルス高圧電源の開発等を更に進める予定であった。「中性粒子の電離機構部」については、予定通り電離機構部の試作品を「多反射リフレクトロン型質量分析器」試験モデルに接続して試験を行い、電離機構部が正常に動作することを確認することができた。一方、「宇宙機搭載用パルス高圧電源の開発」については、宇宙機搭載可能な部品を用いた電源の試験モデルを製作することはできたが、質量分析器との接続試験が予定より遅れたため、次年度に実施することとなった。「マルチターンTOF型質量分析器」については2018年度に引き続き装置の性能を左右する宇宙機搭載用パルス高圧電源の開発を更に進める計画であったが、パルス高圧電源基板と高速データ読出し及び処理回路基板について、詳細な性能評価及び調整を行うことができた。「多反射リフレクトロン型質量分析器」については、2018年度に試作した試験モデルの試験と改良モデルの設計・試作、レーザーによる固体物質の気化を行う部分の設計・試作を行う予定であった。改良後の試験モデルは予定性能を達成したが、レーザーによる固体物質の気化を行う部分については実施を遅らせることにした。「オービトラップ型質量分析器」については、試験モデルの要素試作を行う計画であったところ、計画通りにイオン時間収束性能を確認する成果を得た。「2次元速度計測用ベネット型中性粒子分析器」については、キセノンの原子量以下で、可能な限り質量の重いガスを利用して、質量弁別能力の確認と改良を行う予定であったが、前年度における粒子ビームのエネルギー・角度分散特性の取得に加え、断面プロファイルの取得が短時間・高精度で行える2次元位置検出器システムの構築を実施し、データ取得・処理プログラムの新規開発による格段の改良がなされつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
4年間の研究計画のうちこれまでに3年間が終了した。複数の質量分析器に共通に開発を進めている中性粒子の電離機構部については、「多反射リフレクトロン型質量分析器」に接続して性能確認試験を実施することで正常に動作することが確認できたため、本研究で予定していた開発は完了できたと言える。一方、複数の質量分析器に共通の開発項目である宇宙機搭載用パルス高圧電源の開発については、宇宙機搭載可能な部品を用いたパルス高圧自体の試作はできているため、「多反射リフレクトロン型質量分析器」との接続試験を次年度に実施することで予定していた開発を完了することにする。「マルチターンTOF型質量分析器」の開発については、次のステップは宇宙用を考慮した部品選定によるBBMの開発であるが、費用が過大であるため本研究では概念設計に留める。関連する将来観測ミッションに対して本研究から得た分析器の性能や実現性の見積もりを示し、科学検討から性能要求のフィードバックを得る。「多反射リフレクトロン型質量分析器」については、試験モデルの性能出しを優先したためレーザーによる固体物質の気化を行う部分の設計・試作が遅れているが、次年度に試作後の試験まで含めて実施する予定である。「オービトラップ型質量分析器」については、時間収束させたイオンをフーリエ変換部に導入し、オービトラップ部での周波数スペクトル取得を試みる予定である。なお、計画当初に予定していた、高周波高圧電源の開発は質量分析器の方式を変えたため本研究では開発しないことにした。「2次元速度計測用ベネット型中性粒子分析器」については、較正用粒子ビームの断面プロファイルをより高精度に取得するため、新たに信号読み出し用電荷増幅器を3台導入し、真空槽内の検出器近傍へ設置することで低雑音化図る。この2次元位置検出器は中性粒子分析器そのものにも適用する予定である。
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Research Products
(6 results)