2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H01184
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水谷 泰久 大阪大学, 理学研究科, 教授 (60270469)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アロステリー / ラマン分光法 / タンパク質ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質の機能は、分子内に含まれる複数の機能部位が互いに連動的に働くことによって生み出される。例えば、ガスセンサータンパク質では、ガス分子がタンパク質に結合すると、結合部位に構造変化が生じ、その変化が触媒部位の構造を変化させ酵素活性の制御がなされる。このような複数の機能部位が連動している性質はアロステリーとよばれるもので、そこではタンパク質の構造変化が本質的に重要な役割を果たす。
平成29年度では、酸素依存的なリン酸化酵素Lについて、酸素分子の感知に重要な構造変化を明らかにした。ヘムに結合した酸素分子の脱離に伴うタンパク質の構造ダイナミクスを調べた。野生型と変異体の結果との比較から残基単位でのナノ秒からマイクロ秒にわたる変化の時定数を求めた。得られた時定数は二つのドメインをまたがって近い値を持つこと、ヘムを含むドメインだけでは構造変化の速度が一桁速いことから、二つのドメインが互いに連動することによって構造変化を効率的に伝えていることが示唆された。次に、ドメイン間の連動性がキナーゼタンパク質一般に共通して見られる性質であるかを調べるために、構造モチーフをもつ他のセンサータンパク質とでドメイン交換した人工タンパク質を新たに作製した。酸化還元センサータンパク質のセンサードメインをリン酸化酵素の酵素ドメインと融合したタンパク質では、酸化還元に依存して酵素活性を制御することに成功した。さらに、天然のリン酸化酵素とこの融合タンパク質では、酸素分子の脱着あるいは電子の授受に対して類似の構造変化を示すことを明らかにした。これの成果はタンパク質の連動性に共通した機構があることを示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間分解共鳴ラマン分光装置の性能向上を図り、タンパク質ダイナミクスについてより質の高い時間分解スペクトル測定が可能になった。また、人工タンパク質の作製についてもこれまでに5種の作製にこれまで成功している。共鳴ラマン分光法によるタンパク質の構造解析とキナーゼ活性の定量的計測との組み合わせによって、構造-機能相関の解明が計画通り進んでいる。さらに、理論研究グループとの連携は軌道に乗り、実験データを説明するモデルを構築できつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で述べたとおり、分光装置の整備が完了し、研究は計画通り進んでいるので、研究対象のタンパク質を増やせる状況にある。今後はPASキナーゼタンパク質だけではなく、イオン輸送タンパク質についても研究を広げていく。また、理論研究グループとの連携をより密にし、実験データを統一的に説明するモデルを作っていく。
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Research Products
(14 results)