2018 Fiscal Year Annual Research Report
Solid phase film formation of polymer/ceramic compound particles by hetero-structure control and comprehensive analysis of film formation mechanisms
Project/Area Number |
17H01235
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小川 和洋 東北大学, 工学研究科, 教授 (50312616)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 研 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40396461)
CAVAILLE JY 東北大学, 高等研究機構等, 客員教授 (40794623)
市川 裕士 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80451540)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | コールドスプレー / 超高分子量ポリエチレン / ナノセラミックス / 成膜メカニズム / 複合粒子 / フッ素系樹脂 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者らのこれまでの検討から,ポリマー材料の中でも射出成形が困難な超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)をコールドスプレー(CS)法と呼ばれる固相成膜技術により,粒子を溶融させることなく数mm厚さの成膜に世界で初めて成功させてきた.これはUHMWPE粒子単独では成膜が困難であり,異種材料であるナノセラミックス粒子との組み合わせによるヘテロ構造により成し得たものである.しかし,その成膜メカニズムは不明であり,信頼性の高い,高品位な皮膜を得るためにはメカニズムの解明が急務の課題である.そこで,微視的・巨視的な観点から実験および数値解析により,総合的に粒子付着挙動を解析し,ポリマー/セラミック複合粒子成膜のメカニズムを明らかにし,ポリマー/セラミック複合粒子成膜ならびに造形に対する学術基盤の構築を図り,汎用性のある工学技術の確立を目的とし,研究を進めている.今年度は,フッ素系樹脂の成膜を目的に,2種類のフッ素系樹脂(FEP, PFA)を用意し,CS法による成膜とその成膜効率の向上を検討した.フッ素系樹脂のみでもスプレー条件の最適化により成膜は可能であったが,成膜効率は約1%と低い傾向を示した.ナノセラミックスとして,アルミナを選択し混合粉を作製し,成膜した結果,約5%まで効率を向上させることに成功した.さらに,新たなアイディアとして,基材表面へレーザーによる溝加工を施したところ,成膜効率は約15%まで向上させることができた.ナノアルミナの添加による成膜効率の向上は,分子動力学による解析結果から,粒子表面に存在した水酸基が水素結合を促したためと考えられる.また,レーザーによる溝加工が有限要素解析の結果から,フッ素系樹脂の変形を助長し,粒子間での結合が向上したためと考えられる.得られたフッ素系樹脂皮膜は,顕著な撥水特性を有することを確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は,超高分子量ポリエチレンのみでなく,フッ素系樹脂に関してもナノセラミック粒子との混合粉を用いることで成膜に成功している.得られた皮膜は,顕著に優れた撥水特性を有し,耐食・耐摩耗コーティングとしての応用も考えられる.また,レーザーを用いた金属基材表面の溝加工を施し,機械的にポリマー粒子の変形を促進させることで,成膜効率をフラットな面にナノセラミック粒子を低下していない場合と比べ,15倍程度向上させることに成功した.また,分子動力学を用いた解析により,ナノセラミック粒子との混合により,成膜性が向上するメカニズムを検討しており,ナノセラミック粒子表面に水酸基を有する場合に,水素結合を起こしやすくなることを明らかにし,成膜性が向上する可能性を見いだした.さらに,有限要素解析を実施し,レーザーによる溝加工による粒子の変形が粒子間結合力の向上に寄与し,成膜効率を向上させたことを理解できた.また,最適な溝形状に関する情報も有限要素解析から得ることができ,次年度以降,実験と解析により,さらなる成膜効率の向上を実施していく.
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度は,今年度の研究成果から,水酸基を有するナノアルミナ粒子の混合およびレーザーによる溝加工は成膜効率の向上に顕著な効果があることが明らかとなったことから,更なる成膜効率の向上を目指す.しかし,金属基材上へのポリマー成膜は,成膜効率は向上したものの,まだ密着強度が十分とは言えない.そこで,今後の研究として,ポリマー/金属界面強度を機械的・化学的・物理的な観点から改善していく.機械的な界面強度改善に関しては,レーザー溝加工の溝形状の最適化を実験および有限要素解析から行い,化学的な改善に関しては,水酸基を含めたナノセラミック粒子の修飾効果を検討していく.さらに,物理的な改善として,レーザーやプラズマを利用した基材および粒子表面の活性化を図る.また,今年度の分子動力学解析から,セラミック粒子を用いたポリマー粒子の成膜性向上には,水酸基が有効であり,水分子の利用に可能性があることが示唆されている.そこで,実験においてもコールドスプレーによる粒子送球時に水蒸気を混合させることで成膜性ならびに密着性向上の可能性があるか否かを明らかにしていく.また,実験および解析から得られた結果を総合的に評価し,ポリマー/セラミック複合粒子成膜ならびに造形に対する学術基盤の構築を図り,汎用性のある工学技術の確立を目指す.
|
Research Products
(11 results)