2017 Fiscal Year Annual Research Report
Probabilistic and the largest-class evaluation of water-related disaster risk using large ensemble of future climate projections
Project/Area Number |
17H01294
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
立川 康人 京都大学, 工学研究科, 教授 (40227088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 温 京都大学, 工学研究科, 准教授 (30293963)
Kim Sunmin 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10546013)
萬 和明 京都大学, 工学研究科, 講師 (90554212)
田中 智大 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (20793798)
椎葉 充晴 京都大学, 工学研究科, 名誉教授 (90026352)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 気候変動 / 河川流量 / 水災リスク / 洪水 / 確率評価 / 最大クラス評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で対象とする4つのサブ課題について、平成29年度の研究成果の概要をまとめる。 1)d4PDFデータへのバイアス補正適用の有無の検討と降水極値の変化分析:d4PDFに含まれる降水や陸面水文過程に関連する日本列島全域のデータを整備した。次に、淀川流域、庄内川流域、荒川流域を対象としてd4PDFから得た降水極値データのバイアス補正の有無を検討した。その結果、流域平均年最大24時間降水量等の極値分布は、観測値とd4PDFデータとでよい対応が見られ、両者の頻度分布は同じという仮説は統計的に棄却されなかった。そこで、この三流域については降雨流出計算をする上での降水強度のバイアス補正は適用しなくてもよいと判断した。 2)日本列島全域における河川流量極値の確率分布と最大規模洪水の変化の分析:日本列島全域を対象とする1km空間分解能の流域地形モデルを構築し、分布型降雨流出モデルの構築準備を進めた。次に、分布型降雨流出モデルのモデルパラメータを流域ごとに調整するために、パラメータ同定計算アルゴリズムの高速化を検討した。 3)インドシナ半島全域における河川流量極値の確率分布と最大規模洪水の変化の分析:インドシナ半島全域を対象とする10km空間分解能の分布型河川流追跡モデルを構築し、バイアス補正なしのd4PDFデータを用いた過去実験(6000年分)と4度上昇実験(5400年分)の河川流量を算定して、流量極値の変化を空間的に示した。次に、流量極値の顕著な将来変化が見られたベトナムのレッドリバー流域を対象とし、分布型降雨流出モデルの構築を進めた。 4) 日本および東南アジアの大都市圏流域における水害リスクの分析:庄内川流域と淀川流域を対象とし、気候変動による水害リスクカーブの変化をd4PDFデータを用いて分析した。また、ハノイを含むレッドリバー下流域を対象として、水害被害額を算定するための根拠資料の収集を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究で対象とする4つのサブ課題について、現在までの進捗状況は以下の通りであり、順調に進展している。 1)d4PDFデータへのバイアス補正適用の有無の検討と降水極値の変化分析:淀川流域、庄内川流域、荒川流域を対象とし、流域平均年最大短時間降水量の極値分布を調べ、極値分布についてはバイアス補正を適用せずにd4PDFを利用できる可能性を確認した。現在、日本全国の河川流域について同様の分析を進めている。 2)日本列島全域における河川流量極値の確率分布と最大規模洪水の変化の分析:日本列島全域を対象とする1km空間分解能の流域地形モデルの構築を終了した。また、大量の降雨流出計算を実施するために入出力データ処理・流量計算・データ解析を自動実行するスクリプトを開発した。 3)インドシナ半島全域における河川流量極値の確率分布と最大規模洪水の変化の分析:インドシナ半島全域を対象とする10km空間分解能の分布型河川流追跡モデルを構築し、バイアス補正なしのd4PDFデータを用いた過去実験6000年分と4度上昇実験5400年分の河川流量の計算を実施した。次に、4度上昇実験での海水表面温度の設定が年最大流量の頻度分布に与える影響を分析した後、年最大流量の平均値の将来変化を統計的に分析して、河川流量極値が変化する可能性のある流域を抽出した。この結果をもとに、特に大きな流量変化が見られたレッドリバー流域に着目し、分布型降雨流出モデルの構築を進めた。レッドリバーの分布型降雨流出モデルを構築するために、ベトナム国ハノイ市にあるトイロイ大学と共同研究を開始し、現地調査を実施するとともに、過去の水文資料を入手した。 4)日本および東南アジアの大都市圏流域における水害リスクの分析:d4PDFデータを用い、人口・資産が集積する庄内川流域と淀川流域を対象として水害リスクカーブの将来変化を分析することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策をサブテーマごとにまとめる。 1)d4PDFデータへのバイアス補正適用の有無の検討と降水極値の変化分析:日本全国の河川流域の流域平均雨量あるいはグリッド平均雨量を対象として、観測データから得られる極値分布とd4PDFデータから得られるそれとの違いを統計的に分析する。 2)日本列島全域における河川流量極値の確率分布と最大規模洪水の変化の分析:日本列島全域を対象とする1km空間分解能の分布型降雨流出モデルのモデルパラメータを流域ごとに同定し、降雨流出モデルを完成させる。次に、d4PDF降水極値データのバイアス補正の有無を見極めた上で全国の洪水流出計算に着手する。 3)インドシナ半島全域における河川流量極値の確率分布と最大規模洪水の変化の分析:インドシナ半島全域を対象とする10km空間分解能の分布型河川流追跡モデルでは、d4PDFの流出発生量を入力データとする。この流出発生量のバイアス補正手法を検討する。具体的には、d4PDFの算定で用いられた陸面過程モデルと同様の構造・パラメータを持つ陸面過程モデルを構築し、一方で河川流量に適合するようにチューニングした陸面過程モデルを構築する。次に、両陸面モデルを用いて観測データをフォーシングデータとする再現シミュレーションを実施する。後者の流出発生量を参照データとし両者の流出発生量を対比してバイアス補正手法を開発する。地上観測データの揃っているタイのチャオプラヤ川流域でこの検討を実施し、インドネシア半島全域への一般化を考える。このバイアス補正手法を適用したd4PDF流出発生量を作成し、再度、インドネシア半島全域の流量計算を実施する。 4)日本および東南アジアの大都市圏流域における水害リスクの分析:ハノイを含むレッドリバー下流域を対象として、浸水による被害関数の構築手法を検討する。そのための共同研究をトイロイ大学と実施する。
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Research Products
(17 results)