2018 Fiscal Year Annual Research Report
新しいイメージング技術による神経伝達物質受容体の多様性の理解
Project/Area Number |
17H01378
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
谷本 拓 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (70714955)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 周 国立遺伝学研究所, 遺伝メカニズム研究系, 助教 (90408401)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
一つの神経伝達物質には機能の異なる複数の受容体が存在する。個々の受容体の分子生理学的特性については、詳細な解析がされてきた。しかし、生体内において一つの伝達物質が複数の受容体を持つ生物学的意義は十分に理解されていない。研究代表者らによるこれまでの研究から、ショウジョウバエのドーパミン入力は、コンテクストにより「異なる情報」として細胞に受容されることが明らかになっている。本研究では、内在性のドーパミン受容体の分布と活性化をイメージングすることで、受容体の組み合わせが伝達物質の作用の違いを生むメカニズムを明らかにする。 2018年度は、異なる受容体を通したドーパミンの作用を可視化するため、Tangoシステムを用いて、リガンドにより活性化された受容体をレポーター遺伝子の発現として可視化を行った。Tangoシステムは、①植物ウイルス由来のTEVプロテアーゼとβアレスチンの融合タンパクと②受容体とTEVプロテアーゼの切断部位(TCV)とGAL4などの転写因子の融合タンパクの2つの融合タンパクから構成される。この技術は、Gタンパク共役型受容体(GPCR)に対して特に効果的であり、ショウジョウバエの生体内でも作動することが報告されている。そこで、ノックイン系統の2A-GAL4をTCV-GAL4に入れ替え、Tangoシステム用にそれぞれのドーパミン受容体のC末端を編集した(GPCRTCV-GAL4)。同時にTangoシステムのもう一つの部品である、β-arrestin-TEVプロテアーゼ融合タンパク発現系統を作成した。さらに、β-arrestin-TEVプロテアーゼを時期特異的に発現させることにより、切断されたGAL4の蓄積を最小限にし、直近のドーパミン活性のモニターを試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Tangoシステムをショウジョウバエに適用する過程で、当初の想定に反し、生体内で当該システムが機能しないケースが多発した。これにより、遺伝子編集部位の再検討と新たな遺伝子改変ハエ系統の作出、生体内でのシステム作動の検証を行う必要が生じ、計画に遅延が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、これまでに作成したGAL4系統で細胞内局在するマーカー遺伝子を発現させ、ドーパミン受容細胞をはじめとして、多数の神経伝達物質受容体を発現する細胞の脳内分布を標準脳座標系に網羅的にマップする。この同一座標系に表現された顕微鏡データを主成分分析やクラスター解析などの多次元数理解析を用いて分析することで、脳の構造的特徴を神経伝達物質とその受容体から明らかにする。
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