2017 Fiscal Year Annual Research Report
Glia-induced Remodeling of Neuronal Circuits
Project/Area Number |
17H01530
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
鍋倉 淳一 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 教授 (50237583)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / アストロサイト / 痛覚過敏 / ミラーイメージペイン / シナプス再編 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではグリア細胞によるシナプス監視、および神経細胞の長期再編について、2光子励起顕微鏡を用いた生体脳イメージングを中心に行動変化などの脳機能表現の変化との対比を行うとともに、そのメカニズムについて検討を行うことを目的としている。初年度は、代表者らがこれまで報告してきた慢性疼痛に係る大脳皮質感覚野の神経回路の再編をもとに、臨床医療でしばしば観察される、障害抹消部位と対側の相同部位に痛覚過敏が生じる「ミラーイメージペイン」の脳内メカニズムについて検討を行った。 マウス左下肢の坐骨神経を損傷すると1週間で同側下肢足底部に痛覚過敏は発生し長期間持続する(慢性疼痛モデルマウス)。痛覚増悪期には、右側大脳皮質体性感覚野でアストロサイトの活動が増加し、シナプス再編が起こる。一方で、脳梁を介して、右大脳皮質感覚野からの右側体性感覚野の活動亢進により、左側のアストロサイトの活動が亢進していることが判明した。また、脳梁を介した入力亢進により抑制性神経細胞の活動も亢進していることが判明した。この状態では、左側感覚野のシナプス再編は抑制されており、この部位で痛覚処理を行っている右側末梢感覚には異常はみられなかった。しかし、薬理学的に左側体性感覚野の抑制性細胞の活動を抑制すると、同部位の活動上昇が起こり、アストロサイト活動の亢進している状態では、シナプス再編が亢進し、結果的に、同部位で感覚情報を処理している右側下肢に痛覚過敏が発生した。この結果は、慢性疼痛発症時には、対側末梢感覚情報尻を行っている側の大脳皮質感覚野の活動が亢進する要因が発生した場合には、障害と対側の相同部位の感覚に異常が起こることを示しており、ミラーイメージペインの脳内機序であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度にモデル動物の確立に時間がかかり、当初予定よりやや遅れている。しかし、動物作成後は順調に進んており、既に論文発表も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
脳内グリア細胞の一つであるアストロサイトによるシナプス再編に加えて、別のグリア細胞であるミクログリアによるシナプス監視、および神経回路活動の制御、さらには表現型としての行動への影響について、グリア細胞の活動制御を組み合わせて解明する。ミクログリアによるシナプス監視については、既に覚醒マウスにおいてミクログリアと神経細胞が同一マウスで観察できる遺伝子改変マウスの作成は完了している。また、2光子励起顕微鏡を用いてミクログリアのシナプスの接触のリアルタイム観察する技術は確立している。今後は、ミクログリア動態と大脳皮質神経細胞局所ネットワーク活動連関を検討する予定である。
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