2017 Fiscal Year Annual Research Report
稀少内分泌疾患から生活習慣病へのトランスレーショナルサイエンス
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17H01566
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中尾 一和 京都大学, 医学研究科, 特任教授 (00172263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 智洋 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20402894)
日下部 徹 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (60452356)
中尾 一祐 京都大学, 医学研究科, 助教 (40599932)
神田 一 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (00724535)
青谷 大介 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (80600494)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レプチン / CNP / トランスレーショナルサイエンス / レプチン抵抗性 / 肥満 / 軟骨無形成症 / 視床下部 / 報酬系 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.レプチン抵抗性の分子機序に関する基盤研究とトランスレーショナル研究(TR) (1)レプチン抵抗性は、視床下部弓状核のPOMCニューロンのレプチン応答性障害によると考えられるので、レプチン抵抗性関連分子を探索する目的で、高脂肪食によるレプチン抵抗性肥満マウス、レプチン感受性の遺伝性肥満(ob/ob)マウス、レプチン感受性回復マウスの視床下部の諸神経核を採取し、RNAseq解析を行った。弓状核に高濃度検出され、POMCニューロンに発現し、レプチン抵抗性と経時的に相関した発現変化を示すレプチン抵抗性関連分子としてSerpinA3を同定した。(2)ob/obマウスの高脂肪食に対する「条件付け場所嗜好性」を検討し、高脂肪食嗜好性が亢進していること、この嗜好性亢進がレプチン補充で抑制されることより、レプチンは報酬系を介する摂食を抑制することを証明した。(3)ヒトiPS細胞から、POMC、MC4R,レプチン受容体などを発現する視床下部の神経細胞様細胞を誘導し、視床下部におけるレプチン機能の解析に利用できる可能性を示した。 2.CNP/GCB系の意義に関する基盤研究とTR (1)ヒト軟骨無形成症(Ach)では、著明な低身長に加えて、頭蓋顔面骨の成長障害により大後頭孔が狭窄し、脳幹脊髄障害や水頭症を起こす。Achマウスと血中CNP濃度の上昇するCNPTgマウスを交配して、Achマウスの頭蓋顔面骨の成長障害と大後頭孔狭窄が改善することを示し、Achに合併する頭蓋顔面骨の成長障害や大後頭孔狭窄にもCNP治療が有効であることを証明した。(2)「血管壁CNP/GCB系」の意義を提唱してきたが、内軟骨性骨化障害の無い血管内皮細胞特異的CNP遺伝子欠損マウスを開発して、血管内皮細胞由来CNPの血圧調節における意義と作用機序を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トランスレーショナルサイエンスは、疾患モデル動物などを用いる基盤研究とその研究成果の臨床応用を推進するトランスレーショナルリサーチが両輪の科学である。 レプチンの研究では、脂肪萎縮症へのレプチン補充治療の臨床応用の成功に留まらず、レプチン抵抗性に関する基盤研究を実施して、高脂肪食負荷による視床下部レプチン抵抗性関連分子としてSerpinA3を同定した。また、レプチン欠損遺伝性肥満(ob/ob)マウスにおける高脂肪食に対する「条件付け場所嗜好性試験」を実施して、レプチンはob/obマウスで亢進した高脂肪食嗜好性を抑制すること、報酬系を介する摂食を抑制することを明らかにした。上記の成果以外に、ゼブラフィッシュの脂肪組織の解析系、レプチン応答性神経細胞の解析系、器官培養視床下部スライスの解析系を導入して、レプチン抵抗性の分子機序に関する基盤研究を展開した。 CNPの研究では、軟骨無形成症の疾患モデルマウスを用いて、CNP治療により頭蓋顔面骨の成長障害及び脳幹脊髄障害や水頭症を引き起こす大後頭孔狭窄が改善することを証明し、軟骨無形成症へのCNP治療の臨床応用を加速させる成果を報告した。また、これまで提唱してきた「血管壁CNP/GCB系」を構成する血管内皮細胞由来CNPが血圧調節にも関与することを証明し、その作用機序についても報告した。この研究成果は、CNP/GCB系が骨軟骨系のみならず、循環器系の血圧や動脈硬化における局所調節系としての意義を有することを示すものであり、臨床的意義の解明と臨床応用に発展する可能性が期待できる。 以上のように、本年度はレプチンとCNPの臨床応用の推進に着実に繋がる基盤研究の成果を報告できたので、初年度の研究成果として順調な進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度には、これまでのマウスを主な研究対象とした分子生物学的研究方法や生化学的研究方法に加えて、ヒトiPS細胞を用いた研究、ゼブラフィッシュを用いた解析系など新規の研究方法を積極的に取り入れて、多様なアプローチによる基盤研究を展開してきた。今後の研究においては、本研究の目的と実施期間に合わせて、これまでの研究方法と新規に導入し確立した解析方法の利点と弱点を考察し、アプローチ方法を再検討して、研究目的の達成に合致する研究方法を絞り込み、研究をより効率的に推進する。具体的にはマウスやラットの疾患モデルを用いた研究を中心に基盤研究を推進し、その成果の臨床応用を目標とするトランスレーショナルサイエンスを推進する。
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[Journal Article] Development of ghrelin transgenic mice for elucidation of clinical implication of ghrelin2017
Author(s)
Daisuke Aotani, Hiroyuki Ariyasu, Satoko Shimazu-Kuwahara, Yoshiyuki Shimizu, Hidenari Nomura, Yoshiteru Murofushi, Kentaro Kaneko, Ryota Izumi, Masaki Matsubara, Hajime Kanda, Michio Noguchi, Tomohiro Tanaka, Toru Kusakabe, Takashi Miyazawa, Kazuwa Nakao
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Journal Title
Endocrine Journal
Volume: 64
Pages: 31~33
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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